ヨヘイ、文展に落選する?

 渡辺与平のコマ絵は、よく、竹久夢二との類似を指摘される。見ていると、確かに似ているが、単なる模倣ではなく、コマ絵のスタイルを確立する過程で、不可避的に似てしまったようにも思える。このあたりは、慎重に考えなくてはならない。 さて、コマ絵集『ヨヘイ画集』は、明治43年12月に、文栄閣書店・春秋社書店から刊行された。この頃は、コマ絵作家として竹久夢二が次々と本を出していた頃だ。 図は、美術展覧会の落…

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『煤煙』の伏せ字

 森田草平の『煤煙』は、とてもおもしろい小説だ。朝日新聞連載のあと、単行本は、4冊に分けて出版された。理由は、検閲によって発売禁止処分を受けることをおそれたからである。 第1巻は、小島要吉と真鍋朋子のこみ入った関係はまだ描かれない。第3巻では、伏せ字が目立ってくる。 第3巻(大正2年8月、如山堂書店)の包紙(カバー)と表紙である。装丁者の名はわからない。              …

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チョーク版とは

 川端龍子の自伝『画人生涯筆一管』(1972年3月、東出版)に、「チョーク版」という印刷法のことが出ている。チョーク版というのは、当時都新聞が利用していたごく簡単な版式で、特に外国雑誌に掲載されていた漫画を転写することに利用され、村上天流という画家がこのチョーク版の絵を専門に描いていた。この版式の製版は、チョークを糊で固めてその上に鉄筆で外国漫画を模写し、それに鉛を流し込んで原版を作るのである。…

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川端龍子のこと(その2)

 『金色夜叉画譜・上』の川端昇太郎(龍子)のサインは、次のようなものだ。     何を表しているのだろう。  川端龍子の自伝『画人生涯筆一管』(1972年3月、東出版)によれば、龍子という号が一般的に認知されたのは、大正3年、大正博覧会に二曲半双屏風《観光客》を出品して、入選したときであるという。 自伝には、「雅号「龍子」の由来―父への抗議」という一節があり、次のよ…

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『風俗壊乱』目次

 ジェイ・ルービン著『風俗壊乱 明治国家と文芸の検閲』の目次。1章 序論 第Ⅰ部比較的単純な時代 2章 法(一八八七年の新聞条令と出版条令、法の枠外において) 3章 伝統的風刺と旧態依然の駄作(「無用の人」成島柳北、新聞・政治・毒婦) 4章   写実主義の発達―検閲官が注目を開始する(深刻小説―小栗風葉の「寝白粉」、『明星』のフランス式裸体画、文明批評家的作家―…

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水野葉舟『草と人』

 水野葉舟の小品アンソロジー『草と人』(大正4年6月、植竹書院)の口絵。扉に一千九百十一年三月九日に高村光太郎氏が描かれたる著者の肖像。紀年の為めにこれを入れる。 著者 とある。                    高村光太郎は、「序」を寄せて、古い固まりついた明治の文学界に「あららぎ」一編の出たのは、当時の―一九〇六年の―重大な事件でなければならず、又永遠の感謝となるであらう。…

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へたうま?

 『ホトトギス』明治45年2月の裏絵。渡辺与平の筆である。  いいですねえ、このだいたんな省筆かげんが。女の髪形も電灯もいい。女の肩の線や手の表情は、しっかりした表現力を感じさせる。目次の題は、《白》である。              油井一人編『20世紀物故日本画家事典』(1998年9月、美術年鑑社)によれば、渡辺與平[わたなべ・よへい]一八八八-一九一二 明…

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筆触のフィルター

 姫路市立美術館、「没後50年 白瀧幾之助展」(10月25日まで)。  《浴後》という少女像が不思議な感触をたたえている。それほど目立たない規則正しい筆触が画面全体をおおっていて、ふしぎなリアリティを感じる。現実の再現ではなく、現実を作り直す感じ。                 南薫造らとかわした絵はがきも目をひいた。              

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