偉大なるすねかじり

 高村光太郎の黒田清輝胸像代金2,900円は、『値段の明治大正昭和風俗史・上』(朝日文庫、昭和62年3月)の「公務員の初任給」が大正15年、昭和12年が75円となっているので、それを20万円と仮定すると、約773万円だ。工房への支払い制作材料費などをひいてもかなりの額が残ったのでは、と思われる。  光太郎は、「智恵子の半生」のなかで、次のように書いている。両親のもとにかしづかず、アトリエに…

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黒田先生胸像

 高村光太郎の昭和7年10月30日付、白瀧幾之助宛書簡は、次のような内容である。  おぼえ黒田先生胸像製作費(台座附)として金貳千五百円也外に追加一点鋳造費として金四百円也合計金貳千九百円也右おうけとりいたしました 当時の2900円が、いまではどのくらいかわからないが、大金であることはまちがいない。もちろん、光太郎ひとりの懐に入ったわけではないだろうが。  この胸像は、黒田清輝のひとがらが…

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文豪怪談傑作選最終巻

 『文豪怪談傑作選・昭和篇 女霊は誘う』(2011年9月、ちくま文庫)。中編、長目の短編。豊島与志雄の3編はおもしろかった。伊藤整や原民喜をこういう編集で読むと、また別種のおもむきがある。  昭和も、渡辺温のように小品はたくさんある。新感覚派の十行小説や、岡田三郎のコントも。また、別の機会を期待しよう。  巻末に、怪談傑作選の総目次がついている。本巻が最終刊となるようだ。  個…

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ねこバッグ

 通勤途上の洋服屋さんの均一台(?)におもしろいバッグがあったので買ってしまう。   

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かなしい まっくす

 行きつけの書店で、どちらを買おうか迷う。20分くらい。  諸星大二郎の『諸怪志異 燕見鬼編』(2011年8月、光文社)と佐々木マキの『うみべのまち 佐々木マキのマンガ 1967-81』(2011年7月、太田出版)。どちらも、中味を見ることはできない。うーん。後者にする。  『かなしい まっくす』を見て、あの時代を思い出す。初出は、『ガロ』の1969年2月号。炎上する五重塔の下のコマ…

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智恵子のハサミ?

 高村智恵子は、昭和10年2月末、南品川にあった、斎藤玉男が創立したゼームス坂病院に入院する。 結核の影響もあって、翌11年には、智恵子の健康は悪化する。昭和12年1月、智恵子の姪(妹ミツの娘)で、看護婦として働いていた宮崎春子が看護にあたることになる。以後、「初夏から夏にかけての狂躁状態の時を除いて、紙絵製作が続けられる」(伊藤信吉・北川太一・高村規共編『紙絵と詩智恵子抄』、1965年8月、社…

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煙突文学全集005

  中原中也『山羊の歌』(1934年12月、文圃堂)所収、「雪の宵」。引用は、冒頭2連。   ホテルの屋根に降る雪は   過ぎしその手か、囁きか ふかふか煙突煙吐いて、 赤い火の粉も刎ね上る。  火の粉が煙に混じっているのが、排出直後には視認できたわけだ。

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