記憶というモチーフ

 山田稔の「リサ伯母さん」(2002年5月、編集工房ノア『リサ伯母さん』所収)は、自分で書いてみたいように感じる小説である。記憶のあいまいさがモチーフであるが、ストーリーを紹介するのはやめておく。同じモチーフで書かれたエッセイ「ローラ、どこにいる」(『特別な一日 読書漫録』所収、2008年1月、編集工房ノア版)とどちらがよいかというと、単純化の手続きがほどこされている小説より、自伝的に記憶の折り…

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今年最後の本

 京都に出る用事があり、三月書房にたちよる。地下鉄市役所前で降りて、ゼストの地下街の11番出口からだとすぐである。 もう一つ用事があるので、40分ばかりだが、つりたくにこの作品集、丸尾の『芋虫』など、いろいろ購入した。 

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短篇小説大系その他

 ブログ《出版・読書メモランダム》(古本夜話161 吉澤孔三郎と近代社『世界短篇小説大系』)で、近代社の『世界短篇小説大系』という本が紹介されていて、興味をそそられたので、小山内薫編の独墺篇(大正15年10月、近代社)を一冊購入してみた。 継ぎ表紙の立派な装幀だが、古本屋の店頭では、見たことがない。日本篇も上・中・下の三巻があるそうだが、どんな作品が載っているのか気になるところだ。    …

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ジュリアン・グラック生誕百年

 知人から聞いていたが書店でみつけて購入。『別冊水声通信 ジュリアン・グラック』(2011年12月、水声社)。 『シルトの岸辺』などで知られるグラックは、1910年生まれ。2007年に97歳で亡くなっている。  断章集の『花文字』抄(三ツ堀広一郎訳)が収められていて、次のような一節が目にとまった。 文学の精神分析――テーマ批評――執拗なメタファー(引用者注-ここまでの語に傍点あり)、等々。…

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大倉書店版『うづまき』

大倉書店版、上田敏『うづまき』書誌。                大倉書店版『うづまき』〈初出〉明治四十三年一月一日~三月二日。「國民新聞」に連載。〈初刊〉明治四十三年六月 大倉書店刊。菊判(二二・一cm、一五cm)函付(背文字 墨書き「小説左より横書き うづまき 上田敏著」)。一頁二七字二四行、活字五号、総ルビ。本文二一〇頁、目次なし。扉(薄紙をはさむ)活字で中央に「小説左より横書き …

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『うづまき』解説

 『近代日本の象徴主義』(2004年3月、おうふう)の「文献解題」 から、『うづまき』の項目を引いておく。上田敏『うづまき』一九一〇(明治四三)年六月 大倉書店 『うづまき』は、上田敏の唯一の小説。一九一〇(明治四三)年元旦より四六回にわたって「国民新聞」に連載されたが、物語の起伏に欠けるため、新聞小説としては失敗作とされている。しかし、登場人物たちによってかわされる思索的な会話に…

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白玉書房版『うづまき』

 注文していた白玉書房版『うづまき』(昭和25年5月)がとどく。少し欠けがあるが、カバー、オビもついている。オビ文は、辰野隆。前半はつぎのとおり。『うづまき』は小説の形式に拠る上田博士の人生ならびに芸術に関するディレッタンティズムの談義でもあり、趣味の書とも呼ぶべき述作である。曾て鷗外先生は之を「上田君でなければ書けぬもの」として褒めたことを僕は記憶している。              …

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