なのはな

 通院の帰りによる書店で購入、『萩尾望都作品集 なのはな』(2012年3月、小学館)。  最初はすこしめんくらった。プルトニウムが絶世の美女プルート夫人だったり、ウランは美男のウラノス伯爵だったり。  あまりにベタではないか。  しかし、読み終わって、一冊を閉じて思い直す。たとえば、完全防護服に完全防護マスクの少女を映像化すれば、放射性物質は〈恐怖〉の表象にしかならない。 …

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リーディングの可能性

 リーディングといっても、読書のことではない。  いわゆる「読本」のこと。一人の作家について、あるいは一つのテーマについて、縦横にとらえた本のことだ。研究、解説と本文が共存しているものがいい。  本文のない作家研究よりも、ふんだんに本文が引用された作家ガイドの方が面白いのではないかと思うこともある。  そんなリーディングが出た。  池田功・上田博・木内英美・古澤夕…

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みみずくが出る

 《晩鮭亭日常》さんの3月28日の記事を見ていると、「「悪漢と密偵」のツイートで由良君美「みみずく偏書記」が5月のちくま文庫に入ることを知る」とあるではないか。  情報はめぐり、《四谷書房日録》さんの3月28日の記事には、著書一覧も出ている。  全部文庫になって、ついでに未収録エッセイの類もでるとよい。  *過去記事「旧刊再読」。

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髪の物語

 無名氏の歌より。  S字描く線虫のごときひとすじの髪おちいたり午後のきざはし  さて、昨日買ったのは、東雅夫編『黒髪に恨みは深く 髪の毛ホラー傑作選』(平成18年7月、角川ホラー文庫)。こんな本があるとは。収録作は下記のとおり。 園子温・加門七海・東雅夫「エクステ怪談」伊藤人誉「髪」加門七海「実話」宮田登「女の髪」鶴屋南北「髪梳きの場-『四谷怪談』より」澤田瑞穂「髪梳き幽霊」…

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上田敏、パリで父の写真を見る

 『定本上田敏全集』第十巻(昭和60年3月、教育出版センター)を見ていると、妻宛の1908年4月5日付書簡に次のような一節がある。 一昨日うちの老人(こゝの亭主なり、もと従軍もしたといふボルドオに葡萄園をもち相応の財産はありさうに候)につれられてジァルダン・デ・プラントといふ植物園、動物園をかねたる公園へまゐり、そこの博物館へ入りしに階上の一室にて亡きお父さんの写真を見、奇遇に驚き候、なつ…

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日本注釈学院青春記 共同幻想の巻(その4)

 やっと、4回目が書けました。普通に書けば、小説にする必要はないのですが、小説にするとけっこう本気になってきます。不思議です。だいたい、書くことは決めてあるのですが、意外な方向に展開したりします。  まあ、300枚くらい書いたら、小説を書いたということになるでしょうが、まねごとというところです。       日本注釈学院青春記 共同幻想の巻(その4…

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怪談と小品

 書店で、東雅夫『文学の極意は怪談である ―文豪怪談の世界 』(2012年3月、筑摩書房)を手にとって見ていると、『明治大正小品選』(2006年4月、おうふう)についての言及があるのに気がついた。もちろん、購入した。 ちくま文庫の文豪怪談傑作選の解説がもとになっているというが、読んだ感じは書き下ろしに近い。怪談というモチーフの系譜を近代文学史にたどるというおもむきで、小山内薫の『お岩 小山内薫怪…

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三浦つとむの本

 三浦つとむの本は、ほぼ全部読んでいる。なるべく、定価を安くしたいということで、簡素な紙装判が多いのだが、よれよれになってきた。勁草書房版の選集を購入しようと思ったのだが、これがなかなかない。  『日本語はどういう言語か』は講談社学術文庫で生きているし、『弁証法はどういう科学か』は講談社現代新書で生きている。  『毛沢東主義』は、ドキュメントとしてもおもしろいので学術文庫になるといい…

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当事者と超越的正義

 今年は、少し本を読もうと思う。O駅構内の書店に初めて入ったが、棚がおもしろい。本の並べ方でずいぶん印象は変わるもんだ。苦手なのは、ビジネス本中心の書店。目当てのものがあっても、買う元気がわいてこない。  さて、佐々木俊尚『「当事者」の時代』(光文社新書、2012年3月)。3時間で460頁読んでしまったので、読ませる技量はたいしたもの。物語による時代批評。〈マイノリティ憑依〉というのは、虚…

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天空の赤

 過日、ゆかりの者と、兵庫県立美術館の【解剖と変容:プルニー&ゼマーンコヴァー チェコ、アール・ブリュットの巨匠】展に出かけた。  プルニーの幻視と、行き過ぎた(越境してしまった)感覚、ゼマーンコヴァーのさわさわ感。    映画『天空の赤―アール・ブリュット試論』(ブリュノ・ドゥシャルム監督、2009年)を見た。マイケル・ムーアの影響もあるのか、編集がかった作品だが、…

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