自分の内部が投影される

 仕事の合間に、DVD『はじまりの記憶 杉本博司』(監督中村佑子、Asmik,2012年)を見る。面白いが、仕事にならないので半分でやめておく。  自然史博物館の剥製の写真は、わざと遠近感を消してリアリティをだしているのだそうだ。  杉本自身が、見えるものというのは、自分の内部が投影されたものだというようなことを語っている。  表現と現実が接触するようなタイプの表現者が好きであ…

続きを読む

無垢への誘惑

 三月書房より、デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(小野耕世、中山ゆかり訳、2012年5月、岩波書店)送り来る。  もう少し安ければ、と思うが、この厚さではしょうがないか。 この本に興味がわいたのは、ずいぶん前に、二人の社会学者が編んだ本で、イギリスの50年代のコミック撲滅キャンペーンを扱った、マーチン・バーカーの分析(Haunt of Fea…

続きを読む

注釈と文学理論

 みみずく先生の、注釈は文学理論の問題という見方は卓見だが、ジョナサン・カラー『文学と文学理論』(折島正司訳、2011年9月、岩波書店)の「イントロダクション」に、次のような注目すべき記述を見出すことができる。   ハーヴァード大学教授ウォルター・ジャクソン・ベイトが、諸大学の理事、評議員たちに、危険な理論家に継続的在職権を与えて文学研究を破壊するのをやめようとよびかけたことがあ…

続きを読む

みみずく先生の呼称

 多くのブログがちくま文庫版、由良君美『みみずく偏書記』にふれている。たとえば、わたしと《晩鮭亭日常》さんは、ほぼ同じ頃にこの本を買って同じことに気がついている。  全国で、500冊は売れたのだろうか? いやいやそんなにあまくはないのか。  ところで、青土社版『みみずく古本市』(1984年)の帯に、「みみずく先生」と書いてあったように思う。いま、手もとに本がないので、付記で…

続きを読む

『風俗壊乱』反響(その21)

 『昭和文学研究』第64集(2012年3月、昭和文学会)の「研究動向 検閲」(時野谷ゆり執筆)に次のような記述がある。ジェイ・ルービン『風俗壊乱―明治国家と文芸の検閲』(今井泰子他訳、世織書房 11・4)は、大逆事件前後を軸に、江戸期から戦中までを射程とし、内務省検閲・情報局検閲の機能と実態、文学者と新聞・雑誌メディアの検閲への対応を検証した。

続きを読む

〇〇とその時代

 翻訳者としてのみみずく先生には、スタイナーの『言語と沈黙』や『脱領域の知性』でずいぶんお世話になった。  みみずく先生の文章についてはよく知らなかった。「〇〇とその時代」なんて時代遅れだという趣旨のことを発言していて、あきらかに江藤淳へのあてこすりだった。江藤淳の熱烈な読者だったので、みみずく先生を敬遠することになった。  もうずいぶん前、新刊書店が店先に古書も出していて、日ごとに…

続きを読む

偏書記をかう

 仕事終わりにいちばん近い本屋で、由良君美『みみずく偏書記』を購入。  「主要著作および訳書一覧」がついていて、つぎのような記述を見つける。『椿説泰西浪曼派文学談義』(増補版)青土社、一九八三年(二〇一二年に平凡社ライブラリーより再版予定)

続きを読む