歳晩読書

 年末の読書がこの本になるとは思いもしなかったが、森達也『A3・上』(2112年12月、集英社文庫)読了。  一箇所だけ引用しておこう。 究極の危機管理は仮想敵への先制攻撃だ。過剰な免疫システムは、異物を排除する過程で、いつかは自らも破壊する。

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恩地孝四郎と有島家

 桑原規子『恩地孝四郎研究 版画のモダニズム』(2012年、せりか書房)を読了した。孝四郎の父轍(わだち)については、次のような記述が見られる。 旧和歌山藩士だった父轍は西南戦争で政府軍に参加、そののち上京して横浜で法律を勉強し、孝四郎が誕生した当時は東京司法裁判所検事を務めていた。その後、一八九四年(明治二十七)には検事を辞めて北白川宮の家令となり、その邸内に住むことになる。北白川宮能久親王が…

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きょうのおまけ

 仕事の崖はまだつづくが、今日は墓参で一息つく。  淀屋橋地下の書店で『Kei』12月号をもらう。きょうのおまけだ。ダイヤモンド社の広告誌だが、久しぶりに手にした。森達也の『リアル共同幻想論』は、連載65回目。自著『A3』について書いている。これを読むまでは、またオウムのことか、という気持があったが、集英社文庫になったというので、読んでみることにする。要するに、あの事件をスルーする仕方が、…

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お知らせ

    仕事の崖が続くため、しばらく休みます。 ◇スタジオジブリの小冊子『熱風』のエヴァ特集が期間限定でダウンロードできる。 詳しくはジブリのHPへ。

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大正期の啄木受容について①

 ブログ《啄木の息》の記事が、先日(11月23日)の国際啄木学会のパネル報告を報じてくれている。  少し補足しておこう。新潮社版全集、合本版歌集などによって、啄木の歌は読者を得ていくが、歌を専門にしている歌人ではなく、文学を好む青年たちに浸透していった。  創作版画誌『月映』の版画家、田中恭吉は、歌を作っているが、啄木の影響を見出すことができる。田中恭吉日記 明治四五年一月二九日の記…

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突きささる言葉

 『日本文学』12月号に、澤正宏氏が「3・11の経験と文学」(引用者付記-「経験」に「エァファールング」のルビあり)という文章を寄せている。 一節を紹介しておきたい。 東日本大震災があった翌日の午後、福島第一原発1号機が水素爆発を起こしたとき、瞬間的に頭に浮かんだのは「また福島が犠牲にされたな」という、松川事件を想起しての言葉であった。事故以前の原発建設までと原発稼働後とにも強いられた犠牲はあっ…

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田中恭吉文献121215

 タイトルの6桁の数字は、西暦の下二桁と月日を示す。  少し前になるが 、『和歌山県立近代美術館NEWS』72号に二つの記事が掲載された。  「田中恭吉拾遺(その一) 恩地孝四郎・藤森静雄・大槻憲二に捧げた作品と蔵書」(井上芳子)。ホドラーのことがふれられている。田中が藤森に遺した「青表紙のスヰッツル画家の分」が、フェルディナンド・ホドラーのものではないかと推定されている。田中の木立…

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小説の進路を推理する

  さて、『本の旅人』連載の梨木香歩『きみにならびて野にたてば』であるが、もうじき4回目が出る。運転中には話しかけるな、といって、むかし、平野謙が、連載中の小説にはあれこれ言わないということを指摘したことがある。    しかし、私は素人読者なのですこしぐらいはいいだろう。    小説の地の語りは、女性詩人のもの。菅原千恵子の『…

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