道化と彎曲

 雑誌『ユリイカ』6月号は、山口昌男の特集。半分ほど短時間で読んでしまった。  山口の素描を論じた今福龍太の「素描的精神の鉱脈 デシナトゥール山口昌男」に、『本の神話学』からの引用があって、目がとまる。引用は、次のような一節である。事物の関係を固定させようとするのが支配であるとするならば、解放の第一歩は事物を固定している論理に代わる、さらに有効な事物の関係(その中で事物が、前に属していた関…

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美術展を見る漱石

 『芸術新潮』6月号が漱石特集だと人に教えられて、例の10時半まで開いている書店に向かう。4冊も置いてある。  収穫は、黒田清輝の《湖畔》を漱石が見ている可能性があるという指摘が、古田亮「絵で読み解く漱石の理想の女性像と芸術観」にあること。 この絵は明治33年のパリ万博に出品されており、漱石が見た可能性があるようだ。年譜によると、10月、パリに1週間滞在している。 キャプションには、『三四…

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ダブル・ディラン

 ミシェル・ファイファーという女優さんの映画はよく見ているのだが、代表作とはいえない『デンジャラス・マインド』(1995年)という作品がある。  学園もので、荒れた高校の先生として赴任したファイファー演じるところの、ルアン・ジョンソン先生が奮闘する。  とても、印象にのこっているのは、ファイファー演じるところの、ルアン・ジョンソン先生の詩の授業である。先生は、二人の偉大なディランがい…

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カヴェコ見つけた

    ゆかりの者を訪ねた帰り、スミスという店で、カヴェコスポーツという万年筆を見つけた。今使っているのはペリカーノだが、これは、クリップがないし、キャップはネジ式ではない。ラミーは、筆圧が弱くなってきたので、いささかペン先の腰がかたいように感じられて、最近は使っていない。     カヴェコは、キャップがネジ式で、クリップ…

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「戦後世代の政治思想」

 さて、ブントの理論家姫岡玲治が、経済学者の青木昌彦であることを知ったのは、加藤典洋・高橋源一郎『吉本隆明がぼくらに遺したもの』(岩波書店)に収められた加藤の講演記録「思想から「国」を離隔すること」に指摘があったからだ。  加藤は、この講演記録で、吉本が姫岡を評価した評論「戦後世代の政治思想」の特質として二つの点をあげている。  一つは、「国際情勢と自分の日々の社会生活の実感とは結び…

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対抗文化

 さて、昨日から読んでいる青木昌彦『私の履歴書 人生越境ゲーム』に「対抗文化」(カウンター・カルチャーのルビあり)という章がある。  スタンフォードからハーバードに転任した青木は、1969年の学生反乱を体験し、矢部波人という名義で、雑誌『ニューミュージック・マガジン』の創刊号(1969年9月)に「アメリカ文化革命におけるロック」という文章を寄稿した。その一部が引用されている。革命運動の本質…

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姫岡玲治に茶をふるまう吉本隆明

 注文していた本、青木昌彦『私の履歴書 人生越境ゲーム』(2008年4月、日本経済新聞出版社)がとどく。読もうと思ったのは、青木昌彦がかつてのブントの理論家姫岡玲治であると知ったからだ。  吉本との関わりは次のように記されている。  ところで、一九六〇年の一月、当時は知識階級のあいだでたいへん権威のあった雑誌『中央公論』に、詩人にして思想家の吉本隆明が「戦後世代の政治思想」という論文…

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