長野まゆみ、田中恭吉にふれる 続き

*月映展関連記事。 さてさて、長野まゆみ『絶対安全少年』(2001年1月作品社初刊、ポプラ文庫2010年10月)に、田中恭吉と香山小鳥について言及があることは、先日の記事で触れた。 次のような一節があって、気になった。ある読者が教えてくれた年譜にある記述として紹介されている。 恋の病にとり憑かれた恭吉のために、小鳥は親族のその女性と再度ひきあわせてくれた。婚約者がいることを告げられ…

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展覧会カタログの愉しみ

今橋映子編著『展覧会カタログの愉しみ』(2003年6月、東京大学出版会)。 古書で安くで見つけた。 ずっと探していた。新本は高いので、敬遠しているうちに、忘れそうになって、今日やっとであったというわけ。 表紙の一番てっぺんに置いてあるのが、2000年の田中恭吉展のカタログ。 記事は、エリス俊子「「田中恭吉」展」。初出は、「比較文學研究」77号、2001年12月。 …

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月の本

*月映(つくはえ)展関連記事。 月の本が無いか探していて、良いものが見つかった。 エドガー・ウィリアムズ Edger Williams の Moon という本である。アースシリーズの一冊で、砂漠、地震、津波、島といったものが既刊である。 Reaction Books 2014年刊。 序文に、劇作家や詩人にとって、月は愛と災厄の両方の対象となるとあって、小侍従の…

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絵小説

かつて、大正期の絵画小説に触れたことがある。 現代でも、絵と小説のコラボレーションはいろんなかたちで試みられている。 これは、皆川博子、宇野亜喜良の『絵小説』(2006年7月、集英社)。 皆川の小説に、宇野がカラーの扉絵と、モノクロの挿絵をつけている。 皆川は、時代小説で直木賞を受賞している。 『絵小説』は、『死の泉』のような耽美系のものにつながる。

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煙突文学全集024

。徳富蘆花『不如帰』。 夜十時点検終わり、差し当たる職務なきは臥し、余はそれぞれ方面の務めに就き、高声火光を禁じたれば、上甲板も下甲板も寂としてさながら人なきようになりぬ。舵手に令する航海長の声のほかには、ただ煙突の煙のふつふつとして白く月にみなぎり、螺旋の波をかき、大いなる心臓のうつがごとく小止みなき機関の響きの艦内に満てるのみ。 仰ぎ見る大檣の上高く戦闘旗は碧空に羽たたき、煙突の…

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煙突文学全集023

小出楢重「上方近代雑景」。 私は子供の如く、百貨店の屋上からの展望を好む。例えば大丸の屋上からの眺めは、あまりいいものではないが、さて大阪は驚くべく黒く低い屋根の海である。その最も近代らしい顔つきは漸く北と西とにそれらしい一群が聳えている、特に西方の煙突と煙だけは素晴らしさを持っている。しかし、東南を望めば、天王寺、茶臼山、高津の宮、下寺町の寺々に至るまで、坦々たる徳川時代の家並である。あ…

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伏字の文化史

森話社より、牧義之『伏字の文化史 検閲・文学・出版』(2014年12月)が刊行された。 「序章 伏字に出会う」に、「本書が課題とするのは、戦前・戦中期日本の検閲体制下における、伏字の文化記号としての意義と役割、そして文学作品への影響に関する実証的な考察である。」と、モチーフが語られている。 どこかで炯眼の方が指摘しているように、「内閲」についての考察でもある。 戦前•…

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