水野葉舟の小品アンソロジー『草と人』(大正4年6月、植竹書院)の口絵。扉に
一千九百十一年三月九日に高村光太郎氏が描かれたる著者の肖像。紀年の為めにこれを入れる。 著者
とある。
高村光太郎は、「序」を寄せて、
古い固まりついた明治の文学界に「あららぎ」一編の出たのは、当時の―一九〇六年の―重大な事件でなければならず、又永遠の感謝となるであらう。
と、記している。
後半の作品は、世界の崩壊を暗示するものが多いが、『菌』は、世界がキノコに覆い尽くされるという幻想を描いている。
菌の世界が刻々に弘くなつて行くのであらう。
さう思つて居る目の前にぽとり・・・・・・と、梅の実が落ちた。それにも群るやうに黄い黴が生えて居る。
この日も暮れて行く。
汗は肌に出たままで乾かない。人間の息は臭く、ふとなでると手にべとりと滑かなものがつく・・・・・・
もう、人間の生きて居る世紀が滅びるのであらう。吾々は生活が先づ断れる前に、この眼が開いたまま、地の上に壊れて行く。菌がこの世界の中に、昼となく、夜となく、燐を含んだ光を発して土が見えなくなる・・・・・・濁った鈍い光で地球が光る時が来るのであらう。
萩原朔太郎の感覚のさきどりですね。
