チョーク版とは

 川端龍子の自伝『画人生涯筆一管』(1972年3月、東出版)に、「チョーク版」という印刷法のことが出ている。

チョーク版というのは、当時都新聞が利用していたごく簡単な版式で、特に外国雑誌に掲載されていた漫画を転写することに利用され、村上天流という画家がこのチョーク版の絵を専門に描いていた。この版式の製版は、チョークを糊で固めてその上に鉄筆で外国漫画を模写し、それに鉛を流し込んで原版を作るのである。私はこの仕事を引き受けて熱心に描いたが、毎日二階の窓際でチョークに鉄筆を揮い、それこそ一筆ごとにチョークの粉を吹き飛ばしたので、煙草屋の庇は真白になっていた。

 糊で固めたチョークとは、なるほど簡単そうだ。明治39年頃のことだと思われる。原画を模写するという工程が機械化されないので、画家のアルバイトの余地があったのである。