サビ彫り

 『吾輩ハ猫デアル 中編』の挿絵は、浅井忠(默語)が描いているが、ずっと石版だと思っていた。同時期に刊行された『漾虚集』の中村不折の挿絵が石版なので、そう思いこんでいたのである。
 『吾輩ハ猫デアル』の挿絵は、木版のものがあり、とても味わいがある。
  注目すべきは、苦沙弥先生夫人の着物。

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 木版は凸版で、ハーフトーンが出しにくい。そこで線のかすれをわざと作り出して変化をつける。これをサビ彫りという。『明星』で活躍した伊上凡骨がさまざまなやり方を工夫している。
 銅版画では、一気に複数の彫りを刻みこむハーフトーンコームという道具がある。サビ彫りもそれに似た道具を使うのではないだろうか。このあたりは、彫師に聞けばすぐわかることかもしれない。 

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(付記)『吾輩ハ猫デアル』の上編の挿絵は中村不折、中編・下編の挿絵は浅井忠が描いている。

 

〔修正付記、2017・8・12〕これは、石版かもしれない。記事を削除することも考えたが、しばらくこのままにしておく。現在は判断がつきかねるので、記事の引用等は避けられたい。図版は、架蔵のオリジナルから作成している。

 〔再度付記、2017年9月26日〕明治木版画の専門家に確かめたところ、中巻の浅井忠の挿絵3図は木版多色刷りである。