図は、夏目漱石『漾虚集』(明治39年5月、大倉書店・服部書店)所収の「幻影の盾」のはじめに添えられた、橋口五葉作の短冊形の版画である。タンポポの綿毛は、ヰリアムとクララが親しくできた頃、恋占いで、綿毛を吹きあったことがあるという作中の記述に基づいている。
江藤淳は、『漱石とアーサー王傳説』(講談社学術文庫版)で、『漾虚集』の装飾的なタイトルプレートをヴィネットと呼んでいる。
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ヴィネットとは何だろう。
Vignettes Vignetten Vinetas,L'Aventurine,2001. というヴィネットの図版を集めた本の序文には、次のようなことが記されている。
最初は、単なる編集上の記号で、頁の下部に置かれていた。
ルネサンス期には、単なる装飾だったが、何世紀も使われ続け、ロマン主義時代には、たいへん一般的なものになった。
ヴィネットは、物語を区切り、部数を伸ばす新聞の頁を飾った。
ドーミエ、グランヴィル、デヴェリアが、想像的なヴィネットの制作者としてよく知られていたが、活字製造工場のカタログには、無数の無名のデザイナーが制作した無数の画像があふれていた。
縦長のものばかりとは限らない。横長のも円形のもある。ある意味で、日本のコマ絵と同じ様な役割を果たしていたようだ。
縦長の画像は、五葉より早く、藤島武二が、『みだれ髪』(明治34年8月)の挿絵などで試みている。
