書店の雑誌の棚で、『東洋経済』1月8日号に思わず手が伸びてしまった。特集は、「ストーリーで戦略を作ろう」。何でも、楠木健氏の『ストーリーとしての競争戦略』という本が売れていて、それが核になっている。
楠木氏によれば、「戦略ストーリーというのは戦略構想のための「思考の様式」」のことであるという。
経営学の付加価値とは、「言われてみれば当たり前だけれども、言われるまではなかなか思いつかないことに気づかせて、当たり前のことを当たり前にちゃんとやるよう意識させる」ことです。
なるほど。これは、文学の研究にも通じる。
この特集に手が伸びたのは、約20年前に出た一冊の本を思い出したからだ。その本は、福田敏彦著『物語マーケティング』(1990年11月、竹内書店新社)。構造主義や記号論をマーケティングに応用するという内容だ。本の末尾には、次のようなことが書いてある。
(中略)物語の文法、物語のダイナミックスについて、マーケターも消費者も認識するようになり、企業行動や消費行動に関連して、物語を制御し、それを消費社会で活用していくような傾向が出てくる。その結果、「覚めながら見ることができる夢」を、マーケターと消費者が共同でつくりあげ、消費の喜び、市場の活力、文化の維持・変革などを実現できるような状況が生まれてくる。
おお、なんと楽天的な時代であったことか。いま、「覚めながら見ることができる夢」は、理想ではなく、拘束そのものである。
楠木氏の言うことも、私には、覚めながら夢を見ることを本気で演じれば、虚構であっても、意味が生まれる、というふうに聞こえてしまう。
たとえば、AKB48は、売れているのか、売れているふりをしているのか、はたまた、売れているふりをしていることが売れていることなのか。
ああ、空白の20年よ! 映画『インセプション』のような無限ループに私たちはとらえられてしまっている。
