伝統版画vs創作版画(その2)

 五所菊雄氏の『木版画の世界』は、『明星』(1904年7月)に掲載された、創作版画の嚆矢とされる、山本鼎の《漁夫》の彫りを分析して、「小さな丸刀が自在に使われている」と指摘している。

              Rimg0047_edited1

 漁夫の着物の線が、小さな丸刀で彫ったものだと推定できる。祖田浩一『匠の肖像』(1988年3月、朝日新聞社)は、伊上凡骨の伝記小説であるが、山本鼎の《漁夫》についての凡骨の感想として、素人にとっては、凸形の線よりも、凹形の線を彫る方が容易だということが記されている。
 いま、手元に画集がないが、すいた線の表現は、ニコルソンなどにも見られたように思う。

 凡骨は創作版画的な彫りに否定的であったのかというと、そうもいえないような気がする。図は、『毒草』の《夜》だが、すいた線による表現が見られる。

             Rimg0046_edited1

 藤島の原画がどのようなものであったのか分からないが、創作版画的な彫りを凡骨が取り入れているといえるのではないか。