渡辺温『赤い煙突』(1927年5月、『新青年』)。引用は、創元推理文庫版『アンドロギュノスの裔』による。
秋晴れの青空の中に隣の西洋館の屋根の煙出しが並んで三本あった。両側の二本は黒く真中のは赤い色をしていた。そしてその赤い色の一本はずっと小いさくて何処か 赤い沓下をはいた子供の脛のような形であった。彼女にはまるでその様子が父親と母親との間に挟まった自分であるかのように見えた。けれども、おかしいことにも、彼女は毎日寝床の中から殆どそればかりを見ていたのだが、赤い色のはついぞ一度も煙を吐かなかった。・・・・・・彼女は感動しやすい子供fだったので。その小いさな煙突をひどく可哀相に思って、しまいには涙を浮かべて眺めた。
さて、限られたある一時期に、赤い煙突は煙を吐いた。なぜ?
O・ヘンリーの『最後の一葉』を一回転させて捻ったような感じ。
