田中恭吉文献121215

 タイトルの6桁の数字は、西暦の下二桁と月日を示す。

 少し前になるが 、『和歌山県立近代美術館NEWS』72号に二つの記事が掲載された。
 「田中恭吉拾遺(その一) 恩地孝四郎・藤森静雄・大槻憲二に捧げた作品と蔵書」(井上芳子)。ホドラーのことがふれられている。田中が藤森に遺した「青表紙のスヰッツル画家の分」が、フェルディナンド・ホドラーのものではないかと推定されている。
田中の木立や野原の風景を描いたペン画や藤森の『月映』に発表した木版画などの人体表現を見ると、それぞれにホドラーの影響が窺える。
 日本でのホドラーの紹介は1910年の『白樺』第1巻第7号ですでに行われている。そこでは、自然主義に代わって再び台頭してきた「浪漫的文学的傾向」、「日常の現象を越えて純美界に至」る芸術、印象主義の光の観察から「線と色」の権利回復の動きを示す、つまり象徴主義の画家のひとりとして紹介すものだった。田中の蔵書は彼の関心のありかを示すのみならず西欧の象徴主義や表現主義と『月映』の世界を結ぶ貴重な資料と言えそうだ。
 最近刊行のホドラーの画集。Jill Lloyd,Ulf Kuster.Ferdinand Hodler: View to Infinity .Hatje Cantz Pub. (2012/11/30) .
 「田中恭吉拾遺(その二) 藤森静雄の遺品から」(寺口淳治)。子息より寄贈された藤森の遺品から、《Der Tod》(死神)と題された木版画が紹介されている。後の独特の身体表現につながっていく萌芽が見出せるようだ。
 藤森の図録といえば、福岡美術館のものが思いうかぶばかりで、その微妙な色彩がもっと知られてほしい、と思う。『月映』100年を記念して、ポストカードで版画集が出るとよいのだが。