私は子供の如く、百貨店の屋上からの展望を好む。例えば大丸の屋上からの眺めは、あまりいいものではないが、さて大阪は驚くべく黒く低い屋根の海である。その最も近代らしい顔つきは漸く北と西とにそれらしい一群が聳えている、特に西方の煙突と煙だけは素晴らしさを持っている。しかし、東南を望めば、天王寺、茶臼山、高津の宮、下寺町の寺々に至るまで、坦々たる徳川時代の家並である。あの黒い小さな屋根の下で愛して頂戴ねと女給たちが歌っているのかと思うと不思議なくらいの名所図会的情景である。ただ遠い森の中にJOBKの鉄柱が漸く近代を示す燈台であるかの如く聳えている。
