文献自然主義

 文献自然主義というのは、当方の自家製造語。
 昔、ある人が、その作家の証言だけで、作家論を組み立てているのを見た時、この文献自然主義という言葉を思いついた。文献が述べている事実について、無批判に受け取ることを言う。
 文献が限られている場合、無意識にこの文献自然主義におちいることがある。
 それを避けるためには、まず重出性に留意。同じことが複数の証言によって述べられ、複数性が担保できるかということ。
 次に相互性の問題。田中英夫氏の河本亀之助小伝では、竹久夢二画集の印税支払について、夢二側の証言だけでなく、部数を推定しつつ、他者の証言を拾いつつ、事情を推測している。特定の人物の証言のみを中心におくのではなく、相互性の視点にたって検証するという姿勢からは学ぶことが多い。
 証言の真実性の指標はどこに求めるか。
 星座の星の位置をコンステレーションというが、当該文献のドキュバース(総言説体系)内における位置測定が重要となる。比較、関連の糸を見出すこと。
 ただし、主観的思い込みが幻の糸を見つけることもある。
 視点の相互性の確保が、とりあえずは有効な措置であろう。