教科書名短編

 買い置いていた、中公文庫版『教科書名短編』の「少年時代」篇と「人間の情景」篇とをパラパラ読む。中学教科書に採択された短編小説のアンソロジー。
 竹西寛子「神馬(じんめ)」は、ちょっとカフカ的。しかし、この人は格調はある。高校教科書に採られている「兵隊宿」は好きである。
 「人間の情景」篇に収録の、菊池寛の「形」や、吉村昭の「前野良沢」を読んで、倫理的、道徳的に教える先生が多いのだろうな、と思う。でも、それは間違いではないか。「形」は、短編小説の構造という、倫理以前の事柄が大事なのでは。
 それから、「前野良沢」における杉田玄白は悪人なのではない。時代の推移の中で変わる倫理に同調する人が悪というわけではないのだ。
 各篇の目次は次の通り。

少年時代篇
【目次】
少年の日の思い出/ヘルマン・ヘッセ(高橋健二訳)
胡桃割り/永井龍男
晩夏/井上靖
子どもたち/長谷川四郎
サアカスの馬/安岡章太郎
童謡/吉行淳之介
神馬/竹西寛子
夏の葬列/山川方夫
盆土産/三浦哲郎
幼年時代/柏原兵三
あこがれ/阿部昭
故郷/魯迅(竹内好訳)

人間の情景篇
【目次】
無名の人/司馬遼太郎
ある情熱/司馬遼太郎
最後の一句/森鴎外
高瀬舟/森鴎外
鼓くらべ/山本周五郎
内蔵允留守/山本周五郎
形/菊池寛
信念/武田泰淳
ヴェロニカ/遠藤周作
前野良沢/吉村昭
赤帯の話/梅崎春生
凧になったお母さん/野坂昭如

 
 文庫版の類書として、佐藤雅彦編『教科書に載った小説』(ポプラ文庫)、小川義男監修『二時間目国語』(宝島社文庫)がある。