山田奈々子『増補改訂木版口絵総覧』(2016年12月、文生書院、6500円)。
口絵について、著者は「口絵の使命は小説の主人公を紹介することにあって、小説の筋や事件などを表す必要はなく、登場する人物の風貌、性格を風俗とともに描き出し、その描かれた人物を見ただけで時代背景や、その人の社会的身分、地位、人格の特徴を読者に伝えることが必要である。さらにそれによって小説全編の意義を示すことが要求されている」と述べる。そこに「美術的趣味」に訴える必要が生まれるという。
古書で旧版を購入したばかりで、しまったと思ったが、収録口絵数もかなり増え、口絵画家の経歴、出版社の総覧、彫師・摺師の紹介などもついているので、この増補版も購入した。
口絵一覧は絵のサイズがもう少し大きければと思うが、収録数から考えれば、いたしかたないだろう。
木版口絵の衰退について、著者はコストの問題よりも「新しく興った自然主義文学には洋画家によって描かれた石版画が口絵の主流を占めるようになったというように、人々の嗜好が日本画から洋画に移って行くのを止めることができなかったことにある」と指摘。
鏡花に深い関わりを持つ鰭崎英朋の紹介には「展覧会画家として成功した清方と、口絵挿絵画家にとどまった英朋の後世における知名度の差は、後々まで残る本画と、その場限りで見捨てられる挿絵の性質の違いにあったといえる」という記述がある。
