版面を分析する 単色木版の巻

鹿島淑男(櫻巷)編『漫画百趣』(明治43年1月、日高有倫堂)。ここでいう「漫画」は、コミックの意味ではなく、略筆画のことをさす。
小杉未醒が、「漫画」を書名に入れたコマ絵集をたくさん出しているが、鹿島櫻巷編で『漫画春秋』というのもあるようだ。
集めきるのはたいへんである。鹿島は、報知新聞の記者であったので、新聞掲載のコマ絵に俳句など言葉をつけて刊行したのかもしれない。
こうした、コマ絵や俳画の画集は、小川芋銭や小杉未醒が若干先行し、洛陽堂の夢二画集が大当たりした。
この本は、夢二画集のブレーク後に出たものである。
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竹久夢二のコマ絵集の木版は彫りのあらさが目立つ場合もある。
それに比較すると、「漫画」シリーズは、中間トーンの表現など、工夫が見られる。
次は表紙の「百」の字の拡大。
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木版の特徴と言ってよいのだろうか。機械刷りと推測。
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船頭の着物の部分を拡大する。
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縦方向の彫りははっきりわかる。
水平方向の、縦の線を分断する彫りは、線がつながっている。
つまり、縦方向の彫りの道具(おそらく一般的な彫刻刀)とはちがうもので、横方向の線を掘っていることがわかる。
縦の線の分断が、かすれた中間トーンを作り出している。
次はもっと細かい線の事例。
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絵は小川芋銭。

月下の走馬燈、馬が行く、牛が行く、人が行く、犬が走る。
  村の月火の見櫓に傾きぬ 櫻巷

夜の家屋だろうか。拡大すると次のような感じだ。
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横に引かれた線による分断がさらに細かくなっていることがわかる。しかも不規則のように見える。
距離を置くと、中間トーンが表現されているように見える。
銅版画の線の応用と言ってよいのだろうか。

コマ絵の場合、絵描きと彫り師(当時は彫刻といった)は分業である。

木版の場合、紙型鉛版にとるのが一般的だったのか、そのあたりも勉強不足である。
*拡大図版はナノキャプチャ使用。(木股知史)



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