中村不折の装幀・挿絵の文献

 雑誌『一寸』70号(2017年5月)掲載の岩切信一郎「中村不折の美術活動と印刷ー装幀・挿絵についてー」は、不折の挿絵、装幀についての基本文献といってよい内容である。
 これまで、なんどもふれてきた石版と木版の問題にも関連する。不折といえば、漱石『吾輩は猫である』の挿絵がよく知られているが、ある図録では、すべてが石版だとなっていて当惑したことがある。
 岩切の論では、そこが明確に整理されている。服部書店・大倉書店の『吾輩ハ猫デアル』の6葉の口絵、挿絵のうち、《欄干に倚って橋下をのぞく図》が「輸入の特殊灰味地色紙に木版三色摺」とされ、他が石版となっている。
 石版と木版が区別しにくいのは、輸入洋紙が使用されているためであろうか。
 《泥棒侵入を目撃する猫》は「輸入用紙に石版二色刷」とされている。
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 猫の頭部の拡大図は次のような感じである。
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 いやあ、木版的である。
 岩切氏はこの挿絵について「画家の工夫がみられる挿絵中の傑作で、一版画としても時代の趣ある作例である」と述べている。



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