エミール・オルリクのこと

 『太陽』の増刊「明治大正の文化」(33巻8号、昭和2年6月、博文館)には、菅原教造「版画発達史」という文章が収められており、なかにつぎのような記述がある。
墺地利のオルリックは、画家として、舞台装置家として、又独逸の小泉八雲の作品の挿絵画家として知られてゐる。彼は神田和泉町の小柴で技巧を研究して、新錦絵や石版画を描いた。同じく墺地利の画家カペルリーは京橋五郎兵衛町の渡邊で技巧を修得してやはり新錦絵を描いた。中でも黒猫を抱いた待合の芸者を主題としたものに面白いものがある。その他亜米利加のラム夫人やハイド嬢などもあるけれども、見るに足るやうな作品を出し得なかつた。
 オルリックとは、プラハ生まれの版画家で、ウィーン分離派に属し、日本に1900年と1912年に2度来日している、エミール・オルリク(1870ー1932)のことである。
 第1次『明星』に木版画、蔵書票、石版画が掲載されており、オルリクの名を初めて知ったが、雄松堂出版から出された複刻の『日本便り』の後藤節子氏の解説に詳しい情報が出ていたと思う。今手元になく確認できない。
 ただ、この菅原の記事は興味深い。カペルリーの黒猫を抱く芸者は、夢二と関連があるのか。オルリクの独逸版八雲の挿絵とはどんなものか。バーサ・ラムやヘレン・ハイドに点が辛いが、彼女らも特色ある版画を制作している。
 ネットに面白い文献が出ていて、大庭正春氏の「最終講義エミール・オルリクと浮世絵」の資料がそれである。舞台装置のことにも説き及んでいて参考になる。
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