新刊日記 谷口ジロー『いざなうもの』

 谷口ジローの遺作集『いざなうもの』(小学館)。
 予想したよりも。はるかによかった。
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 自然の主(ぬし)を少年が救う『魔法の島』は、ファンタジーの定番だけれども、泣きそうになった。

 ハーンを主人公にした『何処にか』の2編もよい。
 『茶碗の中』は、茶碗の底にあらわれた顔の侍が現実にやってくるという話で、結末が欠けている。小林正樹の映画『怪談』では、結末が付け加えられていた。谷口作品では、ハーンが物語世界に吸収されそうになるのを、日常に戻るというふうに着地させている。

 『いざなうもの』は、内田百閒の『花火』が原作だが、官能への誘惑が中断され、放り出されるという幻滅モチーフが、後半は未完成ながら、よく描かれている。未完成部分は、小さくネームを活字で入れた方がよかったかもしれない。
 光の当たる部分を白く抜く描法で、夢の世界が不思議に明るく感じられる。

 なにか異質な世界に吸収されてしまうことが、消滅としての死のイメージをかたちづくっている。

 遺作集であるから、エッセイやスケッチもはさまれているのだが、ふだんからこういう編集をありとするのも、マンガを再生させる道の一つであるかもしれない。