今日は、モダン系の石橋思案を紹介しよう。『文藝倶楽部』臨時増刊『ひと昔』明治37年1月、博文館。『ひと昔』というのは、創刊10年を記念しての言葉である。
なにやら洋酒のビンが並んでいる。
武田桜桃「文士と其書斎」によると、石橋思案の書斎は「自劣亭」(じれってい)。
桜桃は書いている。
有楽町は市街電気鉄道の右側、天照太神宮の御社のある辺り、奥深い路地の彼方に、石橋と記した街燈が出て居て、玄関から階子段を上ると、右の八畳が氏の書斎である。何がさて始終『文明』を口にされる氏の事であるから、書斎はまた凡て洋風で、卓子、椅子、其他小卓子から、万事能く調つて居る。ところで一寸素破抜かうなら、卓子とスタデーチヱアとは小波氏よりの寄贈品、客に供するチヱアはこれまた故紅葉氏の遺物と来て居るので、一室が殆んど寄附行為の財団法人と云ふ形ちになつて居るのも面白いではないか。
思案が着ているのは、「支那服擬ひのスタデーコート」だという。
小テーブルの上に載っているのは、桜桃によると、「ウ井スキーとか、シエリーとか」の洋酒らしい。
書物は本立てで立ててあるように見える。本は別室にあるのだろうか。
椅子はけっこう上等である。上の写真の右下にあるのが紅葉の遺品である椅子であろう。
テーブルにはクロスが掛けられている。上と下では色が違うが、写真は別々の時に撮られたものかもしれない。
壁に貼ってあるのは、和風の絵である。これだけが洋風ではない。
下の写真の思案の背後の肖像は、やっぱり紅葉だろうか。
籐籠のゴミ箱もなかなかいい。
