植竹書院のことが気になり、しまい込んでいた縮刷版、森田草平『煤煙』(大正3年4月初版、所持しているのは3版)を見つけた。
過去記事《『煤煙』の伏せ字》で取り上げたことがある。
扉裏に「包紙意匠 安藤兵一氏/表紙意匠 澤枝重雄」とあり、包紙がついていたことがわかる。
また、澤枝が植竹書院の本の装幀を多く手がけていることがわかる。
最終頁には、『サニン』の広告が出ている。
初版は、4分冊(発売禁止を警戒したための分冊という)で、第1巻は明治43年、発行所は、金葉堂・如山堂となっている。第2巻は如山堂書店。
第4巻は、大正2年11月、新潮社よりの刊行である。
『煤煙』には夏目漱石の序文と、森鷗外「影と形 一幕二場 (煤煙の序に代ふる対話)」が収められている。
鷗外の対話劇は、崖からイポリタ(原文では「ヒポリタ」)を抱えて飛び込んだジョルジォ(原文では「ジヨルジオ」)の二人の影(霊か)が語りあうもの。
『煤煙』に影響を与えたダヌンツィオの『死の勝利』を踏まえている。
ジョルジォは、無理心中をわびる。一般的な女への懐疑とともに、イポリタが一度結婚していることへの嫉妬もあったと、ジョルジォは語る。
イポリタは生への意欲が強く、日本に生まれかわることになり、ジョルジォもそれに付きあうことになる。
2場は、ピアノの前にいる小島要吉とそこにやってきた真鍋朋子の出会いを描く。もちろん、二人は生まれかわりという見立てである。
漱石と鷗外の序文がついているのは、とても豪華である。
