西村熊吉のこと

 ブログ《神保町系オタオタ日記》2018年11月8日の記事「竹岡書店の均一台で摺師西村熊吉の次男亀次郎の遺稿」で、オタさんが「竹岡書店の3冊500円(1冊売り不可)のコーナーでは3日目にしてようやく買えるものがあった」として紹介しているのが、三富秀夫編『亀山遺稿』(旧日本会、大正10年7月)で、西村亀次郎、号亀山の遺稿集であるという。ここ
 なんと、亀次郎は、摺師として知られた西村熊吉の息子であったのだ。西村家は「自由な家庭」であったようだ。
 拙著も紹介していただき、恐縮である。

 彫刻師伊上凡骨には、談話記事があり、伝記、伝記小説もあるが、西村熊吉については、そうした存在について聞いたことがない。
 ただ、彼が摺った木版はすばらしい。

 『明星』午年第一号(明治39年1月)には多くの版画が収められているが、摺りは西村熊吉の担当である。
 まず欄画の《馬》。和田英作の絵で、彫りは伊上凡骨。
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 分色が美しい。
 次は、《諏訪湖遠望》、中澤弘光の絵で、凡骨の彫り。
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 風車の羽板の触感、湖面と空の摺り分け方などに注目。
 奥行きの表現はやはり木版が石版にまさる。

 明治38年12月に、木版を集めた『明星画譜』が出ているので、上掲のようなそれ以降の版画は、あまり知られていないかもしれない。

『明星画譜』再版の広告(『明星』午歳貳号、明治39年2月)には、「今回は悉く伊上凡骨氏が日本木版術の妙技に彫刻せられ、西村熊吉氏が参回乃至参拾五回の着色印刷を加へたるものヽみにして、再版に当り筆者の加筆せられたる所、彫刻者の改刻せる所少からず。印刷は西村熊吉氏更に近時進歩の手法を振へり。」とある。なんと、初版とは異なっているのである。

【付記】2023/02/26
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