『漱石全集を買った日』

 山本善行×清水裕也『漱石全集を買った日』(夏葉社)。届いた日に一気読みした。

 正式の表題は長くて「古書店主とお客さんによる古本入門」という一節がくっついていて、そのとおりの内容。

 山本氏が、天牛新一郎さんと撮った写真が巻末に出ている。天牛新一郎さんは、300円の本を買っても、3000円の本を買っても、いつも同じ調子で、「ありがとうございっす」と独特の調子で言ってくれるのだった。山本氏の発言で、アメリカ村に天牛書店が移っていた時期を思い出した。けっこう広かったかな。

 清水さんの高橋輝次氏への評。「インターネットで情報を探さない強み」。なるほどそうだ。検索しているとネットの世界もフィルタリングされているのではないかと、時々感じる。
 現実の古本屋の店先の一冊。それを作為することは誰にもできない。だから古本との出会いは、まさに生きていることの証しかも。そして同時に、出会った本の中には、物語の世界がいろんな形で広がっている。
 古本との出会いによって、うつつと夢が綯い合わさっている不思議な感覚を体験できるのである。

 清水さんが詩に興味を持ったきっかけは、内堀弘氏の『ボン書店の幻』だったという。
 詩はとっつきにくいというのが世間一般の考えだと思うが、一節を読むだけで自分の心に響くかどうかを判断できるという良さが詩にはある。

 古本の世界のおもしろさが言葉になった一冊。


 *三月書房の通販で購入。