京都に出ていたので、松ヶ崎にまわり、京都工芸繊維大学美術工芸資料館の「草の根のアール・ヌーヴォー 明治期の文芸雑誌と図案教育」展を見てきた。
最初、館の裏手に出て、黄葉が絨毯のように散りしかれていて、秋を感じた。京都の北に来たという実感。
4コーナーの展示であるが、たいへんよかった。ミュシャの『装飾資料集』などの図案模写(桑原義顕、土岐純一)は、精緻ですばらしい。
雑誌の表紙では、『新古文林』が目を引いた。小山正太郎、石川寅治、満谷国四郎、黒田清輝らが描いているが、編集の国木田独歩、吉江孤雁のセンスの良さが伝わってきた。でも、独歩社の負債は1万円に達したのであった。
珍しくも、第一『明星画譜』(1901年)が、展示されていて、表紙を確認することができた。もう20年ほど前に、改装本を見たことがあり、それがオリジナルの表紙か判断しかねていたが、今度確認できた。『明星』の裏表紙に使われた長原孝太郎の絵が使われている。
なんといっても、一条成美のコーナーは、充実している。チラシにも使われている、一部では萌えの源流とも目される『新声』の表紙の少女像は劣化しておらず、赤が鮮やかである。
文学史家のヤウスは、『挑発としての文学史』(岩波書店、轡田収訳)で、読者の「期待」に沿いながら,それを微妙に転倒する作品の出現について述べている。一条の絵は、まさに鑑賞者の「期待」に沿いつつ、それを微妙に切り替える新しさを感じさせる。なぜ、そうなるのかはよくわからないが、ポーズや絵柄の選択には、「期待」を満たしつつそれを転換しようとする工夫が感じられる。文字通りの、和のアール・ヌーヴォーなのであった。
一条の事績については、大塚英志「ミュシャから少女まんがへ」(角川新書)が詳しい。
