荷風『おもかげ』と写真

岩波書店版、永井荷風『おもかげ』、昭和13年7月10日初版でこれは7月30日の重版。
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写真が24枚入っている。

写真入りの小説はいつごろからあるのだろう。
こちらに解説できる力量はない。

挿絵の代わりに写真を使う例は、明治30年代にはあったのではないか。

『おもかげ』のあとは、火野葦平の『麦と兵隊』『土と兵隊』がある。

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小品文「郊外」。「葛飾にむかしをおもふ彼岸かな」。
キャプションは「亀戸六阿弥陀道(大正四年九月撮影)」。

スナップショットが挿絵的に使われている。

たとえば、谷崎潤一郎『秘密』で、主人公が少年時に見た深川八幡の奥の風景について、写真があればいいと思うのだが、名所旧跡を正面から撮った写真はあるが、私的な視線による写真はなかなか見つからない。

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キャプションは「寺島町電車踏切」。句は「さかり場を出れば蟲なく闇夜かな」。
句を少し裏切る感じのモダンな風景の切り取りである。

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キャプションは「浅草公園六区裏通」。句は「お花見は舞台ばかりの役者かな」。
写真と句は微妙にずれてる。

荷風は、こうした裏通りに向けたプライベートな写真の発見者だったのか。