『文展十年』

美術叢書から1冊。

青木小四郎『文展十年』(大正5年10月21日、美術叢書刊行会)。
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「例言」から。

例言
▢本書は官設展覧會の代表的作品圖錄と審査員名及び優秀なる作品の目錄とを兼ねたちので、美術愛好者の文展追憶に便せしむるのである。文展十年の說明は極めて大體に亙るもの、且つ出來うる限り理論を避けて、不明簡易なる解說を旨とし、圖錄及び作品目錄を見るの參考に資したるものである。內容に即しての傾向推移に就ては、著者また說を有するが、他日謂ふべき機會があるであらう。
▢寫真は各部に亙つて出來うる限り代表的作品を選ぶ筈であつたが、寫真として見てあまりに原物の面影を破るものは之を避けたので、稍不完金の譏を免れがたいが、出品目録故に解說と比較して見られたい。
美術展の図録カタログは、写真網版が主であるが、モノクロでありながら、オリジナルの面影をよく伝えるものがあるとともに、うまくいっていないものもある。
すばらしい製版については過去記事《超絶的写真網版》を参照されたい。

いくつか紹介しよう。

よく撮れている例、荻原守衞《女》。四回展、明治四三年。
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評は、「荻原守衞の「女」には一種の暗示的の情趣がある。此の人の死は彫刻界から一の光明を奪ったものといふべきである。」というもの。

うまく撮れていない例。岡田三郎助《ひなた》。四回展、明治四三年。
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写真では、影が濃すぎて女性の表情がうかがえないが。オリジナルは影になっているだけで表情や着物は確認できる。