『知つておかねばならぬ印刷と紙の話』(つづき)紙の目について

さて、第二部は「紙」。知りたかったことに一つに「紙の目」のことがある。
「洋紙の目のこと」という節では次のように解説されている。

 普通の印刷では、洋紙ののことは餘り重要ではないが、石版印刷、オフセット印刷等の如く、印刷の際に水を使用するものには洋紙の目といふことが、可なり重要な問題となるのである。それは一般の印刷紙は、湿氣に會へば伸びる性質を以つて居るからである。
 石版印刷等で、數色を取動する場合に、紙が伸びては各色の喰違ひを生じて、印刷を不体裁にするといふ虞れがある。そこで、なるべくその伸び方の少ないものを選ぶ必要を生じて來るのである。
 こゝに紙の目といふのは、要するにパルプの繊維の並び方をいふのである。これは紙を一見しては容易に判別し難いけれども、少しく紙を裂いて見れば、直ちにこれを見別けることが出來る。即ち紙の長方形の長い一邊に沿うて紙を裂いて見て、これが略ぼ眞直ぐに裂かれるならば、この紙は縦目の紙である。然るに中途にしてその裂き口が、短い方の一辺に沿うて裂けるならば、この紙は横目であるといふことが分るのである。而して縦目のものは継には伸び難く横目のものは横には伸び難いのである。然るに印刷の際には、純は押圧の爲めに縦に伸びるといふ傾向があるから、縦目のものを使用すれば、その伸長を防ぐことが出来るのである。之れに反して機目のものを使用すれば、甚だしく紙を縦に伸ばすといふことになる。但し縦目の紙も、半裁して使用する場合には、其の目は横目の紙と同一になるのである。
 斯くの如く紙に縦目と横目とを生ずるのは、抄造の際、大きな紙を截つ時にその截ち方によるのであるから、抄造家は予め之を厳重に区別して、横目の紙・縦目の紙と一見して分かるやうにそれを包装するのが普通である。即ち一連若しくは半連づゝを包装して、その包装紙の上に、ペーパーを貼附する時に、その貼附の場所を以て之を區別して置くのである。縦目の紙は短い方の一辺に、継目の紙は長い方の一編にペーパーを貼付してある。総じて印刷紙の厚物には、横目は少なく多くは縦目である。

多色石版がずれを起こしているときがあるが、それは、紙の伸びによると書かれている。