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恒藤恭『旧友芥川龍之介』(昭和24年8月10日、朝日新聞社)。
恒藤恭(1888−1967)は旧姓井川、一高で芥川と同窓。京大法科卒。同志社大学教授京大教授を歴任。1933 年の京大事件で退官、その後大阪商科大学教授。伝記も研究も出ている。
最初の「友人芥川の追憶」が岩波文庫『芥川追想』に収められていて、全部を読んでみたいと思っていた。
「芥川龍之介のことなど」の「二十九 芥川と社会思想」に、大正7年春のこととして、芥川が京都に来て、宿でともに食事をした際、「社会思想について知りたいから、手ごろの書物を貸して欲しい」と言われて「幾冊」か見つくろったという記述がある。はっきりおぼえていないが、「有名なエルツバッハの著書“Anarchismus,1900”の英訳本」がその1冊だったことは恒藤は記憶していた。
この本を調べると、エルツバツヘル 著, 若山健二 訳『無政府主義論』(黒色戦線社、 1990.5)という翻訳がある。三月書房があれば、すぐ頼めるが、古書で探すことにしよう。初刊は、大正10年聚英閣の新人会叢書の1冊でこちらを探す方がよいだろう。
NDLで調べると、パウル・エルツバッハー 著、 屮果卅从訳『アナキズム』(磯谷武郎、2003)という抄訳もみつかるが64頁である。
さて、『旧友芥川龍之介』には図版が入っていたので紹介しておこう。
まず、「樹下の餓鬼先生 芥川龍之介ゑがく」という芥川自筆の絵葉書。
岩波書店版『芥川龍之介全集 第十八巻』(1997年4月8日)の234−235頁に収録されている。大正7年9月18日付。
絵の外の文字は「忙しかつたので返事が遅れた 土日両日は大抵東京にゐる 秋来たら/一度やつて来給へ 以上」。
絵の中の文字は「寸步却成千里隔/紛々多在半途中 我鬼題幷画」。
つぎは、「裸形の芥川龍之介 大正四年八月出雲海岸にて著者ゑがく」という恒藤の絵。
もう一つは、「女 芥川龍之介ゑがく」というもの。
これは、調べていないので時期がわからないが、絵画の新しい潮流についての理解が芥川にはあったことを示している。
「十三 英文書簡一通」に明治45年7月22日付の英語書簡が紹介されている。末尾に古本屋で7円でビアズリーの『サロメ』を購入したある。おそらくレーン社版のものだろう。7円は高価といってよいだろうか。