竹久夢二のコマ絵。
『ハガキ文学』第6巻第8号(1909年8月1日、精美堂)所載。
駅に見送りに来たが、列車が出発してしまった後で「TOO LATE」ということなのだろう。
コマ絵とは、本文と関わりのない絵で、ページ割付で生じた空白を埋めるために使われた。
先日、𠮷田紀子『ポスター芸術論』(2022年2月25日、三元社)で、ロートレックの石版ポスターについて「ポスターというメディアが要求する条件を満たそうとする彼独自の造形的探求に注目したい」と書いているところを読んで、すぐ私の念頭に上ってきたのは竹久夢二のコマ絵の構成の仕方であった。
どういうことかというと、夢二は、彫刻師(版を彫る人)の効率を考えて、線と面を描いているのではないかと思ったのである。
このところ雑誌のコマ絵をたくさん見ているが、木版は使い方はいろいろで、細線だけで表現したものもあれば、ある程度の太さのある線のみを使って描いているものもある。
夢二の画面の特徴は、黒、白の対比と、省略された線にある。
女性の髪と、帯の柄の黒い部分。木柵の黒い部分。着物の柄は描かない。
草原はわずかな線で表現されている。
彼方に去った列車は、黒で単純化されている。
名取春仙が得意とした筆のタッチの木版での再現は選択していない。筆のかすれのような線を彫るのは手間がかかるだろう。
シンプルな黒白対比と単純化された線。彫刻師の労力を軽減するだけではなく、夢二独自のスタイルを成立させる。
