煙突文学全集028 柳田國男『野鳥雑記』

柳田國男『野鳥雑記』、「鳥勧請の事」より。青空文庫による。


 ポンソンビ・フェーヌ君は英国から遣って来て、もう二十年近くも日本の神道を研究している。この頃は鳥喰神事(引用者注-「とりばみのしんじ」のルビあり。)に深い興味を抱いて、書物で知っただけの場所は、片っ端から尋ねてあるいているということである。熱田神宮で行われる鳥食いの古式は、この春も拝観して来た。名古屋の南の郊外が煙突の林になってしまってからは、もう肝腎の烏が参列してくれない。式は型ばかりになって空しくお祭の供物をもてあましているという。宮司の桑原さんは考え深い人だ。今にいずれかへ祭場を移される他はあるまいと私も思っている。

風景が「煙突の林」となり、「烏」がいなくなった。

*底本:「野草雑記・野鳥雑記」岩波文庫、岩波書店
   2011(平成23)年1月14日第1刷発行
底本の親本:「柳田國男全集 第十二巻」筑摩書房
   1998(平成10)年

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