竹久夢二『山へよする』のことを調べていて、上林暁の「古本漁り」というエッセイがあることを知った。
2冊目の随筆集『文と本と旅と』(昭和34年5月10日、五月書房)に収められている。
「終戦後」は新刊よりも古本が好きになったとして、上林は次のように書いている。
昔は僕も新刊書の匂いが好きであったが、この頃は古本の匂いがずっと好きになった。終戦後はことに新刊本が粗悪になったので、いよいよ古本に惹かれるようになった。
上林は目的意識を持って古本屋に遠征するよりも、ふらっと立ち寄った古本屋でいろんな本に出会うことがうれしいと書いている。
しかし、改まった気持で遠征(?)に出かけて、重たい風呂敷包みを小脇に抱えて帰って来るよりも、夕方など阿佐ヶ谷か荻窪あたりへフラッと散歩に行って、思いがけぬ本を一冊か二冊手に入れ、浮き浮きした気持で帰って来る時の方が、楽しさは勝るようだ。そんなにして手に入れた本に、芥川竜之介の「羅生門」(大正六年阿蘭陀書房)、広津和郎「接吻八篇」(大正五年金尾文淵堂) 小出楢重 「大切な雰囲気」(昭和十一年昭森社) 竹久夢二「山へよする」(大正八年新潮社)同「夢のふるさと」(大正八年新潮社) 播磨楢吉訳「子の見たる父トルストイ」(大三年新潮社) 岩野泡鳴「征服被征服」(大正八年春陽堂)などがある。
1950年頃の話として、30年ばかり前に刊行された本が中心である。
これらの本が、人の手に渡って今も残っているといいなと思う。
*『山へよする』研究はこちらで連載中。
【付記】
2023/10/07 18:51
今気づいたが「古本漁り」は、中公文庫版、山本善行編『文と本と旅と-上林曉精選随筆集』に収録されている。
