和歌山県立近代美術館ニュースの122号に、井上芳子氏の「私輯『月映』Ⅰについて 「まどひ」のうれしさ」が掲載されている。
PDF版も美術館のサイトで公開されている。
2015年の恩地孝四郎展のための調査を進めている際に、恩地の遺品から「私輯『月映』Ⅰ」の目次が見つかったという。
昨秋の美術館の「「月映」 つきてるつちに つどひたるもの」展では、この目次を参照しつつ、版画が展示されていた。
12月もあるものという勘違いで一度しか見に行けなかったが、井上氏の稿によって、何が問題となるのかがわかった。
私輯『月映』は、洛陽堂から創作版画誌『月映』を出すことがほぼ確定し、その試行版として、恩地孝四郎、藤森静雄、田中恭吉が自刻自摺の版画をまとめたもので、大正3年4月から7月にかけて6冊が作られた。病気のため、田中はⅤ、Ⅵには版画を寄稿していない。
目次草稿によって、従来とは異なる、対象版画を推定した過程が記されている。
短期間の間に3人は、驚異的な進展を示す。
『月映』展の図録も取り出して眺めていると、田中恭吉は初期から、身体の流動性を表現していることがわかる。
藤森の空白の使い方、恩地の構成的方法も、初期から顕著であることもわかる。
