オタさんのXで、日比野啓氏講演「曾我廼家五郎と戦前の文化状況:『松本学日記』をもとに」が紹介してあったので、さっそく視聴してみた。
解説を引用しておこう。
元内務省幹部で貴族院議員だった松本学の日記を手がかりに、戦時下においてエリート官僚たちが「文化工作」を通じて戦意の高揚や国威の発揚を図り、喜劇王・曾我廼家五郎をはじめとする演劇・芸能関係者に積極的に働きかけた実態を明らかにします。ただしその試みは、単なる粗雑な復古主義とは異なる側面を持っていました。
国粋主義の近代化をはかる松本学と、伝統へ回帰する曾我廼家五郎の交差とすれ違いがとらえられている。
国粋主義の近代化という問題は大きい。
モダニズムと文化工作の関連を追究する大塚英志氏の仕事とも関連するような気がする。
松本学については、ジェイ・ルービンの『風俗壊乱: 明治国家と文芸の検閲』(2011年4月、世織書房)の第15章に文藝懇話会の工作者としての動きが紹介されている。
この松本学という人物はなかなかの使命感の持ち主であったように思われる。彼は映画統制のみならず、教育統制、宗教統制にも関わった。彼はまた自らも古代の天皇による統治に特徽的な祭政一致の復活を求める著書を何冊か著した。彼の掲げる「日本主義」という謳い文句には外国語習得無用論も含まれていた。松本はー九三四(昭和九)年七月、斎藤内閣の総辞職にともなって警保局を辞任した後でさえも(彼は貴族院議員となった)、文化組織や、固有の日本精神の認識と理解を促進するための出版事業を維持する等、驚異的な能力を示した。松本は日本文化連盟という団体の傘下にー八もの異なった団体を有していた。松本は日本文化連盟を日本プロレタリア文化連盟に対抗させるために創設したのである。(松本の外国語教育に関する見地からすると)皮肉なことに、国際文化連盟というような組織が Cultural Nippon という英文の季刊誌を出版したり、「アジア学生協会」(日本で学ぶアジア出身の学生のためのもの)や「外国女性のための生け花協会」のような団体を後援したりした。松本は国際文化連盟の創立を提案した英文のパンフレツトを出版までした。この連盟のねらいは「終局的には、初代の神武天皇によって伝えられた世界家族主義の実現であり、これはあらゆる時代に絶対に誤たず、かつあらゆる場所で真実であると思われる『神聖で普遍的方法』に從う」ものであった。
『風俗壊乱: 明治国家と文芸の検閲』(2011年4月、世織書房)351ページ。*注番号は省略。
【編集履歴】
2025/09/03 誤記修正 文化交錯→文化工作
