官能的! グルーズと『三四郎』

 漱石の『三四郎』に、美学の先生からグルーズの絵を教えられる場面がある。二、三日まえ三四郎は美学の教師からグルーズの絵を見せてもらった。その時美学の教師が、この人のかいた女の肖像はことごとくヴォラプチュアスな表情に富んでいると説明した。ヴォラプチュアス! 池の女のこの時の目つきを形容するにはこれよりほかに言葉がない。何か訴えている。艶なるあるものを訴えている。そうしてまさしく官能に訴えている。け…

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夏目漱石『こころ』見返しについて

 別の目的で文献をしらべていたところ、漱石『こころ』の見返しについて言及している文献を見つけたので紹介しておきたい。 文献は、『宮城学院女子大学大学院人文学会誌』第15号(2014年3月31日発行)掲載の、「修士論文題目及び内容の要旨」畑山杏那「夏目漱石における服飾感情と服飾描写—思想との関係を中心に—」。 「『心』では見返し、『硝子戸の中』では表紙と見返しに更紗が採用されている」という指摘があ…

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口の中から蓮の花

 芥川龍之介に『沼』という小品があり、つぎのようなラストになっている。「おれ」は沼に身を投げる。 おれの丈よりも高い蘆が、その拍子に何かしゃべり立てた。水が呟く。藻が身ぶるひをする。あの蔦葛に掩はれた、枝蛙の鳴くあたりの木々さへ、一時はさも心配さうに吐息を洩らし合つたらしい。おれは石のやうに水底へ沈みながら、数限りもない青い焔が、目まぐるしくおれの身のまはりに飛びちがふやうな心もちがした。 …

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小村雪岱、お蔵だし

 勢いで購入したが、使いこなせない資料がある。新聞小説の切り抜きであるが、『纏女房』という作品がわからない。国会図書館で検索すると、1948年版の駿台書房の『纏女房』が出てくる。邦枝完二の作品なのだが、『喧嘩鳶』と言う作品との関わりも気になる。五流研究者の手に余るので、使いこなせる方に譲りたいと思っている。 新聞、雑誌連載小説の切り抜きを作るときは、本文も一緒にお願いしたいと、切に思うのであった…

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エミール・オルリクのこと

 『太陽』の増刊「明治大正の文化」(33巻8号、昭和2年6月、博文館)には、菅原教造「版画発達史」という文章が収められており、なかにつぎのような記述がある。墺地利のオルリックは、画家として、舞台装置家として、又独逸の小泉八雲の作品の挿絵画家として知られてゐる。彼は神田和泉町の小柴で技巧を研究して、新錦絵や石版画を描いた。同じく墺地利の画家カペルリーは京橋五郎兵衛町の渡邊で技巧を修得してやはり新錦…

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街並木

 オタさんが京都まちなか古本市で500円で買ったという画集『街並木』は、荻原井泉水編で、名取春仙、岡本一平、池田永治、鈴木信太郎、富田渓仙、川端龍子、石切山草助、浜田庄司らが絵を寄せているらしい。 大正8年頃も、こうした和製ピクチャーブックはけっこう出ていたのかもしれないなあ。

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わすれ団扇

 竹久夢二に《わすれうちわ》という作品があって、お葉をモデルにしている。垣の前に立つ女性が団扇をあごのあたりにかざしている。 今でも木版が販売されている(たとえばここ)。「わすれ団扇」という題は、いわゆる秋扇、夏が終わったあとの団扇のことだ。用済みになったという意味が含まれている。 今橋理子『兎とかたちの日本文化』(2013年9月、東京大学出版会)は、上村松園《待月》という絵について、おもしろい…

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渋谷修と竹久夢二

 古本との出会いによって、ずっと気にかけていたことの手がかりがつかめることがある。 書きものがすすまず、すでに夕刻であるが、阪神夏の古書ノ市に再度足を運ぶことにする。古本好きの人々が収穫をあげていることが刺激になったということもある。会場は初日に比べると落ち着いていて、じっくり見ることができた。 書苑よしむらのところで図録を見ていると、図録の判型、体裁ではあるが、著作らしきものが数冊並んでいるの…

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中村不折の装幀・挿絵の文献

 雑誌『一寸』70号(2017年5月)掲載の岩切信一郎「中村不折の美術活動と印刷ー装幀・挿絵についてー」は、不折の挿絵、装幀についての基本文献といってよい内容である。 これまで、なんどもふれてきた石版と木版の問題にも関連する。不折といえば、漱石『吾輩は猫である』の挿絵がよく知られているが、ある図録では、すべてが石版だとなっていて当惑したことがある。 岩切の論では、そこが明確に整理されている。服部…

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ヒユウザン会広告

『ホトトギス』(大正元年10月)を見ていたら、ヒユウザン会の広告が載っている。参加者の名簿が付いている。長沼ちゑ子の名があがっている。午前8時から開いていたのだ。  『ホトトギス』は複刻版があるが、一冊1000円で、オリジナルをかなりの冊数買ったことがある。 コマ絵の試みもおもしろいのがあるので、折を見て紹介したい。

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