中村不折の装幀・挿絵の文献

 雑誌『一寸』70号(2017年5月)掲載の岩切信一郎「中村不折の美術活動と印刷ー装幀・挿絵についてー」は、不折の挿絵、装幀についての基本文献といってよい内容である。 これまで、なんどもふれてきた石版と木版の問題にも関連する。不折といえば、漱石『吾輩は猫である』の挿絵がよく知られているが、ある図録では、すべてが石版だとなっていて当惑したことがある。 岩切の論では、そこが明確に整理されている。服部…

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ヒユウザン会広告

『ホトトギス』(大正元年10月)を見ていたら、ヒユウザン会の広告が載っている。参加者の名簿が付いている。長沼ちゑ子の名があがっている。午前8時から開いていたのだ。  『ホトトギス』は複刻版があるが、一冊1000円で、オリジナルをかなりの冊数買ったことがある。 コマ絵の試みもおもしろいのがあるので、折を見て紹介したい。

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天理ギャラリー漱石展図録

東京の天理ギャラリーの漱石展の図録を取り寄せてみた。見たことがないものばかりで、ぜひ行きたいと思った。ただ、仕事の予定がたてこんでいて自由にならない。『三四郎』の原稿も目を引くが、中村不折の『不折俳画』(明治43年3月、6月、上下巻、光華堂)の原画が出ているのに関心が向いた。木版と原画がならべて示してある。『不折俳画』では木版となり、味わい深い仕上がりとなっているが、原画は筆触が流麗で色に濃淡が…

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あれとこれ 複刻版とオリジナル

あれとこれシリーズは、似ているようで離れている、離れているようで似ているものを二つ取り上げて比べてみるというアイデアからはじめたものだ。今回は、複刻版とオリジナルの比較である。複刻版は、研究をはじめた頃にはなくてはならぬ存在であった。第一次『明星』の複刻版は、27万円、月賦で購入していた。はたらいていたので、気軽に研究室でみるというぐあいにはいかなかった、記事はむろんのこと、図版にも関心をもった…

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関節はずしの作品論

今、校正しているのは「芥川龍之介『地獄変』覚書ーイメージの相互関連性の視点から」という論考である。作品論というのはうっとうしくて、複数の意味の可能性なんていいながら、結局は一つのラインに読みをしぼっていき、読み方競べみたいなことになる。それって感想の言い合いではないのか、といわれても仕方がないところがある。 寺山修司ではないけれど、描かれていないことも作品であるといってしまえばどうなるのか。対…

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イポリータ肖像

藤島武二 イポリータ・サンツィオ肖像。 ガブリエレ・ダンヌンチオ著、石川戯庵訳『死の勝利』 大正2年9月、大日本図書株式会社。 横顔肖像は、このころからあったのだ。三色版だと思う。もとは、パステル画か。

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『増補改訂 木版口絵総覧』

山田奈々子『増補改訂木版口絵総覧』(2016年12月、文生書院、6500円)。 口絵について、著者は「口絵の使命は小説の主人公を紹介することにあって、小説の筋や事件などを表す必要はなく、登場する人物の風貌、性格を風俗とともに描き出し、その描かれた人物を見ただけで時代背景や、その人の社会的身分、地位、人格の特徴を読者に伝えることが必要である。さらにそれによって小説全編の意義を示すことが要求されて…

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少女純情詩集

西條八十『少女純情詩集』(大日本雄弁会講談社、昭和7年10月発行、掲示図版は昭和14年9月35版)。 すごく売れている。西條には抒情小曲集もあったはず。 詩型としては、北原白秋の「断章」や室生犀星の「抒情小曲」が、大衆化した形。 絵との組み合わせは、竹久夢二が開拓者。 窓辺の乙女。蕗谷虹兒画。三色版か。けっこうきれいな刷りだ。窓辺の少女イメージが定番となっていたことは、大塚英志『…

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