吉井勇『黒髪集』 響きあうモチーフ

   竹久夢二の装幀はいつも工夫に富んでいるが、わたしがベストワンと考えているのは、吉井勇の歌集『黒髪集』(大正5年4月、千章館)である。 *『黒髪集』表紙。パラははずしていない。  柳の枝と葉が描く曲線におおわれるように、肌脱ぎになった長い髪の女性がすわっている。 両手で顔を覆って、悲しみにくれているように見える。  上部に配されたハート(心臓)の先端から、赤い線がのびて、血に逆ハート型の…

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田中恭吉日記を読み始める

◇田中恭吉日記の1910年の分を読み始める。  ファイル3冊に分ける。 薄い字のところは、モバイルの画面で確認しながら、読まないといけないかも。 少しずつの積み重ねである。 今回は、オムニアウトライナーを使ってみることにする。 ◇文庫櫂さんのツイートで、旅立っていった(売れていった)本が出ているが、すごい内容だ  『細雪』私家版は、いくらだったのかなあ。谷崎本全部集めたら、『谷崎潤一郎の本と美…

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一條成美が描く少女について

 一條成美について再考するために、雑誌『新声』を少し買い集めてみた。『新声』と『明星』については、拙著『画文共鳴 『みだれ髪』から『月に吠える』へ』(2008年、岩波書店)で、新派和歌の主導権をめぐる覇権争いが背景にあることを指摘した。 一條の『明星』離脱は、裸体画の発売禁止や、『文壇照魔鏡』による鉄幹攻撃などがからんでいることも知られている。 一條の描いた『新声』の表紙は、清新である。 『明星…

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牛乳乙女

11日報告の文字資料できる。 最近は横書き。番号方式。文字資料と画像資料は分けている。 ATOKをかましたWordで、タテ2段組を開発して、画像も読み込んで、資料作成していたが、苦労の割に汎用性がないので、横書き、文字・画像分別方式にいきついた。 これが、一條成美の、『新声』デビュー作、《牛乳乙女》。佐藤義亮によれば、部数がふえたという。 背後の枠は、『若菜集』挿絵でさまざまに試みられている。こ…

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『恋愛と文學』

 11日の報告の準備。肩がはってきたので、図版撮影とレジュメ作成を交互に行う。 図版は、新潮社明治34年3月、『恋愛と文学』。『新潮社100年図書総目録』では、佐藤儀助編となっているが、広告で上田敏としたものを見た記憶がある。それがみつからない。この頃こういうことが多い。メモをとらないので、まぼろしの記憶になってしまうのだ。 表紙は山中古洞。この人は古手だが、感覚におもしろいものがある。 折り込…

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一條成美と『新声』

 さて、小報告のためいろいろ調べていると、いろいろ分かってくる。 一條成美は、『明星』が四六倍判の雑誌形式になった第6号(明治33年9月)の表紙をデザインしている。例の百合の花を嗅ぐヌードの女性像である。この号には挿絵は《牛》という写実的な作品が載るばかりだが、次の7号には多くの少女像が掲載される。 『明星』を離れた一條成美は、『新声』で活躍する。 この間の事情について、『新声』を発行し、のち新…

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官能的! グルーズと『三四郎』

 漱石の『三四郎』に、美学の先生からグルーズの絵を教えられる場面がある。二、三日まえ三四郎は美学の教師からグルーズの絵を見せてもらった。その時美学の教師が、この人のかいた女の肖像はことごとくヴォラプチュアスな表情に富んでいると説明した。ヴォラプチュアス! 池の女のこの時の目つきを形容するにはこれよりほかに言葉がない。何か訴えている。艶なるあるものを訴えている。そうしてまさしく官能に訴えている。け…

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夏目漱石『こころ』見返しについて

 別の目的で文献をしらべていたところ、漱石『こころ』の見返しについて言及している文献を見つけたので紹介しておきたい。 文献は、『宮城学院女子大学大学院人文学会誌』第15号(2014年3月31日発行)掲載の、「修士論文題目及び内容の要旨」畑山杏那「夏目漱石における服飾感情と服飾描写—思想との関係を中心に—」。 「『心』では見返し、『硝子戸の中』では表紙と見返しに更紗が採用されている」という指摘があ…

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口の中から蓮の花

 芥川龍之介に『沼』という小品があり、つぎのようなラストになっている。「おれ」は沼に身を投げる。 おれの丈よりも高い蘆が、その拍子に何かしゃべり立てた。水が呟く。藻が身ぶるひをする。あの蔦葛に掩はれた、枝蛙の鳴くあたりの木々さへ、一時はさも心配さうに吐息を洩らし合つたらしい。おれは石のやうに水底へ沈みながら、数限りもない青い焔が、目まぐるしくおれの身のまはりに飛びちがふやうな心もちがした。 …

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小村雪岱、お蔵だし

 勢いで購入したが、使いこなせない資料がある。新聞小説の切り抜きであるが、『纏女房』という作品がわからない。国会図書館で検索すると、1948年版の駿台書房の『纏女房』が出てくる。邦枝完二の作品なのだが、『喧嘩鳶』と言う作品との関わりも気になる。五流研究者の手に余るので、使いこなせる方に譲りたいと思っている。 新聞、雑誌連載小説の切り抜きを作るときは、本文も一緒にお願いしたいと、切に思うのであった…

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