一條成美に光があたる

◇大塚英志氏の近刊(7月)、『ミュシャから少女まんがへ 幻の画家一条成美と明治のアール・ヌーヴォー』(角川新書)。図版250点というので、厚めの新書になるのだろうか。編集者としての鉄幹や一條に光をあてるものらしい。楽しみである。 ◇小展示の準備で、一條成美が表紙を描いている『新声』を探すがなかなかない。第7巻2号(明治35年2月)を2冊、入手したがその一冊。蔵書印がないといいのだが。  前に…

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ヴィーナスを立ち上がらせると

 いただいた『一寸』第74号(2018年6月)を見ていると、森登氏の「藤島武二の版画図版と『はな』(1) 銅・石版画遺聞70」で、拙著に言及があるのを見つけた。  『明星』がタブロイド判からB5判 (四 六 倍判 )の雑誌形式に代わったのは第六号(三十三年九月十二日)からで、一條が表紙画を描いている。 ジョルジョーネ 《眠れるエヌス》 (第十一号掲載 )の横 たわる半裸の女性をミュシャ風の…

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吉井勇『黒髪集』 響きあうモチーフ

   竹久夢二の装幀はいつも工夫に富んでいるが、わたしがベストワンと考えているのは、吉井勇の歌集『黒髪集』(大正5年4月、千章館)である。 *『黒髪集』表紙。パラははずしていない。  柳の枝と葉が描く曲線におおわれるように、肌脱ぎになった長い髪の女性がすわっている。 両手で顔を覆って、悲しみにくれているように見える。  上部に配されたハート(心臓)の先端から、赤い線がのびて、血に逆ハート型の…

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一條成美が描く少女について

 一條成美について再考するために、雑誌『新声』を少し買い集めてみた。『新声』と『明星』については、拙著『画文共鳴 『みだれ髪』から『月に吠える』へ』(2008年、岩波書店)で、新派和歌の主導権をめぐる覇権争いが背景にあることを指摘した。 一條の『明星』離脱は、裸体画の発売禁止や、『文壇照魔鏡』による鉄幹攻撃などがからんでいることも知られている。 一條の描いた『新声』の表紙は、清新である。 『明星…

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牛乳乙女

11日報告の文字資料できる。 最近は横書き。番号方式。文字資料と画像資料は分けている。 ATOKをかましたWordで、タテ2段組を開発して、画像も読み込んで、資料作成していたが、苦労の割に汎用性がないので、横書き、文字・画像分別方式にいきついた。 これが、一條成美の、『新声』デビュー作、《牛乳乙女》。佐藤義亮によれば、部数がふえたという。 背後の枠は、『若菜集』挿絵でさまざまに試みられている。こ…

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『恋愛と文學』

 11日の報告の準備。肩がはってきたので、図版撮影とレジュメ作成を交互に行う。 図版は、新潮社明治34年3月、『恋愛と文学』。『新潮社100年図書総目録』では、佐藤儀助編となっている。  表紙は山中古洞。この人は古手だが、感覚におもしろいものがある。 折り込み口絵は、一條成美。 これも雑誌初出があるはずだが、思い出せない。「成」が一條成美の署名だとしたら、下にある「よした刀」というのは彫刻師(…

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一條成美と『新声』

 さて、小報告のためいろいろ調べていると、いろいろ分かってくる。 一條成美は、『明星』が四六倍判の雑誌形式になった第6号(明治33年9月)の表紙をデザインしている。例の百合の花を嗅ぐヌードの女性像である。この号には挿絵は《牛》という写実的な作品が載るばかりだが、次の7号には多くの少女像が掲載される。 『明星』を離れた一條成美は、『新声』で活躍する。 この間の事情について、『新声』を発行し、のち新…

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官能的! グルーズと『三四郎』

 漱石の『三四郎』に、美学の先生からグルーズの絵を教えられる場面がある。二、三日まえ三四郎は美学の教師からグルーズの絵を見せてもらった。その時美学の教師が、この人のかいた女の肖像はことごとくヴォラプチュアスな表情に富んでいると説明した。ヴォラプチュアス! 池の女のこの時の目つきを形容するにはこれよりほかに言葉がない。何か訴えている。艶なるあるものを訴えている。そうしてまさしく官能に訴えている。け…

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夏目漱石『こころ』見返しについて

 別の目的で文献をしらべていたところ、漱石『こころ』の見返しについて言及している文献を見つけたので紹介しておきたい。 文献は、『宮城学院女子大学大学院人文学会誌』第15号(2014年3月31日発行)掲載の、「修士論文題目及び内容の要旨」畑山杏那「夏目漱石における服飾感情と服飾描写—思想との関係を中心に—」。 「『心』では見返し、『硝子戸の中』では表紙と見返しに更紗が採用されている」という指摘があ…

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口の中から蓮の花

 芥川龍之介に『沼』という小品があり、つぎのようなラストになっている。「おれ」は沼に身を投げる。 おれの丈よりも高い蘆が、その拍子に何かしゃべり立てた。水が呟く。藻が身ぶるひをする。あの蔦葛に掩はれた、枝蛙の鳴くあたりの木々さへ、一時はさも心配さうに吐息を洩らし合つたらしい。おれは石のやうに水底へ沈みながら、数限りもない青い焔が、目まぐるしくおれの身のまはりに飛びちがふやうな心もちがした。 …

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