伝統版画vs創作版画

 さて、昨日から五所菊雄氏の『木版画の世界』を読んでいるが、「伝統版画と創作版画」という章があって、恩地孝四郎について次のような指摘がある。 恩地さんは、ことごとく伝統木版では嫌われ失敗とされていた技法を積極的に取り込んで作品を作っています。 わざと失敗すれすれの技法をそれでも恩地さんは楽しむように、また伝統版画の鮮やかさの逆をいって、実験的ながら面白い作品を次々に生み出していきました。 恩地さ…

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サビ彫り問題

 とある駅から、版画教室の看板が見え、行ってみようかと思ったことはあるが、不器用で肩凝らしの私にできるものだろうか、と思いつつ、今日にいたっている。版画の勉強するには、自分でやってみることも必要かなとは思うのだ。  ネットで見つけて、注文した本がとどいた。五所菊雄著『木版画の世界 第二版』である。実作者の書いた本がないかとさがしていたらたまたま見つかった。関心のある方は、五所氏のHPにおも…

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伊上凡骨の評伝が

 《「北方人」日記》さんによると、『木版彫刻師 伊上凡骨』という本が、徳島県立文学書道館の叢書から、3月に刊行されるらしい。複製とオリジナリティの問題、サビ彫りの技法などがどのように書かれているか楽しみである。 *雲の表象を扱った本が出ているのに気がついた。ユベール・ダミッシュ著、松岡新一郎訳『雲の理論 絵画史への試論』(2008年9月、法政大学出版局)。 *岩波文庫版、グスタフ・ル…

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第二次『明星』の自刻木版

 第二次『明星』は、用紙も特別に漉いたものを使用し、組版から直接印刷したという。大正13年10月(第5巻5号)の号の編集後記「一隅の卓」で、与謝野寛は、次のように記している。 □「明星」の用紙は震災前と同じく、特にこの形に王子製紙会社の厚意で漉いて貰つてゐる。この紙質は先年来同社で「明星」と命名されてゐるものである。それから現に東京で発行する雑誌で原版(即ち紙型で無く)のままで印刷してゐる…

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『藤牧義夫 眞僞』

 ものすごくぶあつい。でも読みやすい。大谷芳久著『藤牧義夫 眞僞』。 発行年・2010年11月8日、定価・21,000円 (本体20,000円+税) 発行所・学藝書院 〒248-0013 鎌倉市材木座1-11-3 電話・FAX 0467(22)3062 e-mail / tojaku@m4.dion.ne.jp                      某巨大オンラ…

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いつか見た空

 額装を依頼していた版画届く。アクリルガラス、チーク材の額。 水口かよこ作《空の隙間 ♯10》。 仕事場の壁にかけて、毎日、一度はながめよう。 いつか見た空。記憶の中の身体感覚がよみがえる。 あっ、エヴァンゲリオンという人がいる。なんでも、アニメ『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』に似たショットが出てくるという。 まあ、それぞれが、一枚の版画から、いろんな連想をするのも楽しい。        …

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版画を買う

 版画を購入した。 『版画芸術』第150号を見ていると、水口かよこ氏の特集記事があって、《空の隙間 ♯10》という作品に心ひかれた。                  紹介記事「゛一瞬の光゛を摺る」(友澤宏子氏執筆)によると、次のようにモティーフが説明されている。〈空の隙間〉シリーズは、作家が「季節や時間とともに変化する空の色や雲の形を眺めていると、とぎれることなく流れる時間、自然の営みに…

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『版画芸術』橋口五葉特集

 『版画芸術』の2010年冬号が、「橋口五葉 アール・ヌーヴォーの日本スタイル」という特集を組んでいる。  漱石本の装釘や、大正期の「新版画」の美人画。 美校の一年後輩に、山本鼎がいた。岩切信一郎氏「橋口五葉 人と作品」は、次のように記している。在学時に互いに交流があって、同人誌『平坦』第2号(明治38年10月)には五葉も参加し「新元禄装い」と題した挿絵を掲載している。言わば、近…

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サビ彫り

 『吾輩ハ猫デアル 中編』の挿絵は、浅井忠(默語)が描いているが、ずっと石版だと思っていた。同時期に刊行された『漾虚集』の中村不折の挿絵が石版なので、そう思いこんでいたのである。 『吾輩ハ猫デアル』の挿絵は、木版のものがあり、とても味わいがある。  注目すべきは、苦沙弥先生夫人の着物。                 木版は凸版で、ハーフトーンが出しにくい。そこで線のかすれをわざと作り出して…

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絵はがきと印刷

 石版か木版か迷うような図版にであうことがある。もしかしたらふたつを混用している可能性もあるのではないか。  印刷のことはわかりにくい。名のとおった制作者の発言は残りやすいが、印刷の現場の技法を伝える職人さんの言葉は残りにくい。たとえば、鏑木清方の指示はこうこうで、どの点が実現するのにたいへんだったということについての職人さんの回想があれば、おもしろいだろうと思うが、そういうのは残りにくい…

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