「凸版」と「着色木版」

 斎藤昌三『書痴の散歩』(昭和7年11月、書物展望社)を見ていると、「装幀界の追想」(初出、昭和4年11月、「商業美術月報」)に、「装釘も明治大正昭和と通じて、草双紙型からボール表紙、新大和綴から布装、革装と大体の変化を見、表紙の印刷も木版から石版、金版と進化し、今日に至つてゐる」云々という一節があるが、金属版、すなわち亜鉛凸版は「金版」とされている。読みは「かねはん」でいいのだろうか。 先日購…

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石版のずれ

日露戦争期の絵はがき。明治38年。見ていただきたいのは、石版印刷のずれである。多色石版で色を重ねているが、「逓歩哨」の持つ銃身はずれている。石版の特徴が緑色の部分などよく出ている。 日露戦争関連の絵はがきをたくさん集めると『絵はがきから見た日露戦争』が書けるかもしれない。もうあるの?

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木版直接印刷の場合 第二次『明星』

 第二次『明星』が自刻の木版にこだわり、印刷も紙型によらずに行っていたことは過去記事《第二次『明星』の自刻木版》で紹介した。今、もう一度引用しておく。 大正13年10月(第5巻5号)の号の編集後記「一隅の卓」で、与謝野寛は、次のように記している。 「明星」の用紙は震災前と同じく、特にこの形に王子製紙会社の厚意で漉いて貰つてゐる。この紙質は先年来同社で「明星」と命名されてゐるものである。それから…

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戦争と美人絵はがき

使用済みの絵はがきの持つ意味について、実物を購入して初めて納得することがあった。これは一目見て、あの有名な洗い髪のお妻だとわかった。 征露第二年とあるので、明治38年である。築港を出たとあるので、大阪から出征したのであろう。はがきの下に「三都百美人 其卅一」とある。お妻は、髪結いが間に合わず、洗い髪のまま写真撮影に臨むしかなかったが、それがかえって人気を呼んだのである。津田青楓『漱石と十弟子』(…

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版面を分析する

ある学会で、図版を持ち寄って、それがどういう版であるかを分析するというこころみがあったそうな。わたしが初めて迷いを感じたのは、石版と木版の区別だった。先行文献では、区別の仕方を示したものもある。ロートレックの石版ポスターは、クロワゾニズムというか、それぞれの部分の色を変えるという木版画の技法を模倣したものになっている。もともと多色石版(クロモリトグラフィー)は、連続諧調でのフルカラー印刷が可能で…

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切り抜き

先日、さんちかの古書市で、切り抜きを買った。切り抜きは、発表媒体が特定できない場合は、資料として使えない。以前、ある挿絵画家のレアな切り抜き集を購入した。出典は調べればわかると思っていたが、あまかった。わからない。けっこう、文献は出ている人物であるが、まったくわからない。 さんちかで購入したのは、没年が明確な画家のものである。出典はわからなくとも、だいたいの時期は推定できる。それに印刷見本とし…

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How Prints Look

 表紙を見て、どうしようか迷ったのだが、購入してよかった。  これまで何冊か、印刷の本を紹介したが、これは初級本で、とっつきやすい。価格も安かった。  How Prints Look 印刷はどう見える、でいいのかな。  サブタイトルに、Photographs with Commentary とある。説明付きの図版ということで、図版とその説明が、1ページに収まるようになって…

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版画印刷同定法

注文していた洋書届く。  著者は、Bamber Gascoigne(バンバー・ガスコイン?)。書名は、How to Identify Prints: A complete guide to manual and emchanical processes from woodcut to inkjet. 版元は、Thames & Hudson.初版は、1986年。購入したのは、200…

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印刷と版画

注文した洋書届くが、なんと2013年に翻訳が出ていた。  アントニー・グリフィス(Antony Griffiths)著、原著は、1996年版、University of California Press刊、Prints and Prinmaking An introduction to the history and techniques. 翻訳は、越川倫明他訳『西洋版画の歴史と…

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プリント配ります

 教室で先生が「それではプリントを配ります」というようになったのはいつごろからか。プリントはもちろん印刷物のこと。子供の頃は謄写版だったが、それも「プリント」だったか。  なぜこだわるか、というと英語のprint,printingは、印刷から版画まで含む概念であるが、日本語のプリントは、印刷物のみを指すからだ。  木版の研究は盛んであるが、それ以外の印刷手法についてはそんなによい本が手元にな…

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