大正期の啄木受容について①

 ブログ《啄木の息》の記事が、先日(11月23日)の国際啄木学会のパネル報告を報じてくれている。  少し補足しておこう。新潮社版全集、合本版歌集などによって、啄木の歌は読者を得ていくが、歌を専門にしている歌人ではなく、文学を好む青年たちに浸透していった。  創作版画誌『月映』の版画家、田中恭吉は、歌を作っているが、啄木の影響を見出すことができる。田中恭吉日記 明治四五年一月二九日の記…

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出ました!

 『別冊太陽 日本のこころ195 石川啄木 漂泊の詩人』(2012年4月、平凡社、2300円+税)。    「詩人」とあるのは、いいですねえ。  わたしが最も好きなのは次の一首。考へれば、ほんとに欲しと思ふこと有るやうで無し。煙管をみがく。   50頁をごらんください。

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お知らせ

 別冊太陽の新号が没後100年の石川啄木の特集を組んでいる。  25日過ぎには店頭に並ぶのでは。  短歌の鑑賞を書いた。老舗の雑誌の玄関口をまかされることなどめったにないので、普通の人々に啄木の歌の魅力が伝わるように工夫した。とんがりすぎず、ありきたりにならないように注意をはらいながら。  タイトルは「人生という小宇宙」。  個別性と普遍性が融合した啄木の歌の魅力をあらわ…

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愛国詩人啄木

 目録買いで2000円くらいだった。スメラ民(みたみ)文庫の『愛国詩人啄木』(昭和17年3月、世界創造社)。4編の評論が収められている。            日本文学戦争宣言      (無署名)若き日の啄木         牧 守道映画の使命          宮寺 弘日本世界社会論       森 良方 今日は、中味より、表紙中央の日の丸イーグルに注目。日の丸をカギ十字にかえると、ナ…

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『ローマ字日記』と名刺

 石川啄木が『ローマ字日記』を書き始めるのは、1909年4月7日からで、新しい黒クロース装のノートが使われた。ただし、「明治四十二年当用日記」の4月3日の項に、北原白秋の使いの者が詩集『邪宗門』を届けにきたという記事があり、6日まで、ローマ字で記述されている。  ただ、それ以前にも、「明治四十一年日誌」にも、ローマ字の記述はあらわれる。浅草凌雲閣の近辺の、いわゆる十二階下の私娼街の娼婦の名…

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石川啄木のキンキン声

 ちくま文庫版、森於莵『父親としての森鷗外』(1993年9月)を読んでいると、観潮楼歌会にふれて、次のような記述があった。おでこの石川啄木は故郷の山河に別れて間のないころであったろう、頭に浮んだ歌を特有のキンキン声で口ずさむと父が大声で笑う。 また、次のような記述もある。石川啄木は特色のある歌を読む人として別の意味で父を喜ばせた。同氏の疳高な調子はこの集りの中でも特別で階下まで響いた。「こそこそ…

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『国際啄木学会研究年報』第14号

 国際啄木学会から、『国際啄木学会研究年報』第14号が発行された。  今号の特集は、「徹底討論『一握の砂』」で、2010年9月に立命館大学で開催されたシンポジウムがもとになっている。太田登氏の司会で、田口道昭氏、河野有時氏、小菅麻起子氏、大室精一氏ら、啄木研究者が『一握の砂』の各章を担当し、報告のあと、指定討論者の望月善次氏や会場の参加者と討議するというかたちになっている。 シンポジウムは…

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啄木短歌の三行書き

 雑誌『短歌』12月号の特集「はじめての石川啄木」を読む。今年は、歌集『一握の砂』刊行100年である。明治43年12月初旬にこの歌集が店頭に並んだ。 近藤典彦氏の「短歌在来の格調を破れり―啄木三行書きの意義―」という論考に次のような指摘がある。啄木三行歌は「在来の格調」を自在化した上での「くずし」なのである。在来の技法を若くして摂取した後「くずし」に入ったピカソをわたくしは連想する。 近藤氏は、…

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