石川啄木『ローマ字日記』と浅草十二階下の娼婦の名刺

明治後期の浅草凌雲閣(十二階)下の千束町には私娼街が存在した。表向きは銘酒屋、新聞縦覧所の看板をかかげているが、実質は女性が売春を行っていた。 石川啄木の『ローマ字日記』は、1909年の十二階下の娼婦とのやりとりを赤裸々に記したものとして知られている。 昔、浅草のことを調べている時に、娼婦がローマ字書きの名刺を持っていたという文献を見つけた。メモをとったのだが、それを失ってしまった。 日記…

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1986年の発表資料

本、書類の整理を始めてもう2年になる。 本は約1万冊を整理した。まだ残っている。 やっかいなのは、資料のコピーなどの紙ものである。 整理ができていないものはすぐ引き出せないし、PDF化するといっても、その時間がたいへんである。いつまでも書きものができるわけではないし、思い切って処分してしまうほうに気持ちが傾いている。 一種の自己解体のようなことであるが、処分していけば、見えてくることもあ…

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再版出来せり

新潮社版『啄木全集 第一巻』広告。 『文章倶楽部』(大正8年5月、新潮社)裏表紙。「再版出来せり」とある。 詩人としての石川啄木の名を、知らない人は無からう。彼は、歌壇の革命者であつた。が、彼はひとり、歌壇の革命著であつたばかりで無く、廣く思想界の革命者であつた。此の點で、彼は北村透谷に似、国木田独歩に似て居る。架蔵本は、昭和二年九月三十日、二十五版である。初版は大正8年4月。 全集の…

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啄木、金田一の探偵コンビ、アニメ化

 伊井圭の『啄木鳥探偵処』がアニメ化されるらしい。  ここ。  創元推理文庫版が出たのはずいぶん前だが、帯を見て、〈文豪〉ブームでイケメンキャラとしてアニメ化するのだと納得。

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明治43年、東京市大水害

 過去記事《大水のあと》で次のように書いたことがある。石川啄木の歌集『一握の砂』(明治43年)には渋川玄耳(藪野椋十)の序文がついている。 序文の最後に、「犬の年の大水後」という1行がある。この年、8月5日より梅雨前線と二つの台風が原因で大雨が降った。ウィキペディアに「明治43年の大水害」の立項があり、たいへんまとまった記事になっており、リンクも充実している。 注釈をつけたときに、大逆事件を暗に…

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大正期の啄木受容について②

 2012年11月23日の国際啄木学会のパネル報告の要約の続きである。ずいぶん間があいてしまったが、続きを書いておく。  大正期の啄木受容について①  「和歌史」における早い時期の啄木評価を児山信一『新講和歌史』(昭和六年三月、大明堂)によって示した。『悲しき玩具』では、『一握の砂』以来の無雑作に生活を歌ふといふ傾向が一層著しくなり、ある場合には全く傍若無人に歌ひ捨てて、そこに自暴自…

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大正期の啄木受容について①

 ブログ《啄木の息》の記事が、先日(11月23日)の国際啄木学会のパネル報告を報じてくれている。  少し補足しておこう。新潮社版全集、合本版歌集などによって、啄木の歌は読者を得ていくが、歌を専門にしている歌人ではなく、文学を好む青年たちに浸透していった。  創作版画誌『月映』の版画家、田中恭吉は、歌を作っているが、啄木の影響を見出すことができる。田中恭吉日記 明治四五年一月二九日の記…

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出ました!

 『別冊太陽 日本のこころ195 石川啄木 漂泊の詩人』(2012年4月、平凡社、2300円+税)。    「詩人」とあるのは、いいですねえ。  わたしが最も好きなのは次の一首。考へれば、ほんとに欲しと思ふこと有るやうで無し。煙管をみがく。   50頁をごらんください。

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お知らせ

 別冊太陽の新号が没後100年の石川啄木の特集を組んでいる。  25日過ぎには店頭に並ぶのでは。  短歌の鑑賞を書いた。老舗の雑誌の玄関口をまかされることなどめったにないので、普通の人々に啄木の歌の魅力が伝わるように工夫した。とんがりすぎず、ありきたりにならないように注意をはらいながら。  タイトルは「人生という小宇宙」。  個別性と普遍性が融合した啄木の歌の魅力をあらわ…

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愛国詩人啄木

 目録買いで2000円くらいだった。スメラ民(みたみ)文庫の『愛国詩人啄木』(昭和17年3月、世界創造社)。4編の評論が収められている。            日本文学戦争宣言      (無署名)若き日の啄木         牧 守道映画の使命          宮寺 弘日本世界社会論       森 良方 今日は、中味より、表紙中央の日の丸イーグルに注目。日の丸をカギ十字にかえると、ナ…

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