煙突文学全集002 2011年08月31日 宮沢賢治『グスコーブドリの伝記』(1932年4月、『児童文学』2号)。 クーボー博士と出会う場面。ぐんぐん試験が済んで、いよいよブドリ一人になりました。ブドリがその小さなきたない手帳を出したとき、クーボー大博士は大きなあくびをやりながら、かがんで目をぐっと手帳につけるようにしましたので、手帳はあぶなく大博士に吸い込まれそうになりました。 ところが大博士は、うまそうにこくっと一つ…続きを読む
煙突文学全集001 2011年08月30日 田山花袋『蒲団』(明治40年9月『新小説』)。 「所有」には「もの」というルビがついている。こういう、風景と心理の組み合わせは、永井荷風が得意としたものだが、一九世紀フランス小説から学んだものと思われる。 「とにかく時機は過ぎ去った。かの女は既に他人の所有だ!」 歩きながら渠はこう絶叫して頭髪をむしった。縞セルの背広に、麦稈帽、藤蔓の杖をついて、やや前のめりにだらだらと坂を下…続きを読む
智恵子の肖像 2011年08月21日 ちょっと前になるが、《daily-sumus》さんが、「SANATOGEN」という記事の末尾で、高村智恵子の写真を紹介していて、おっ、と思った。いつも見る智恵子の印象と違ったからだ。そしてこれが高村智恵子。大正五年(筑摩書房版『高村光太郎全集』より)。よく知られる縞の着物の写真よりも痩せて美形に見える。プログラムといっしょにしまってあったコピー資料から。 光太郎全集のどこにあるのだろ…続きを読む
鈴木三重吉の小品 2011年08月16日 ゆかりのものを見送った帰りにK書店による。 東雅夫編『文豪怪談傑作選大正篇 妖魅は戯る』(2011年8月、ちくま文庫)が出ているので購入。レジへ向かう前に読みふけってしまう。 明治篇『夢魔は蠢く』につづくもので、漱石『夢十夜』の流れにある、鈴木三重吉、中勘助、内田百閒、寺田寅彦、それに志賀直哉の夢もの、巻末附録として諸家の関東大震災の体験録を収める。 三重吉の『たそがれ』が冒頭に置…続きを読む
辻邦生とスーリオ 2011年08月11日 辻佐保子の『「たえず書く人」辻邦生と暮らして』が文庫化(2011年5月、中公文庫)されていたので、気になることを確かめてみた。 わたしがもっとも好きなのは、連作短篇『ある生涯の七つの場所』だ。中公文庫版を古書で少しずつ集めて読んだ。 辻佐保子の解説を引いてみよう。 短篇と長編の機能を同時に備えた『ある生涯の七つの場所』は、〈仕掛け屋〉を自認する辻邦生ならではの野心的な…続きを読む
斎藤玉男 2011年07月16日 斎藤玉男は精神科医で、高村智恵子の治療にあたった。高村光太郎の「智恵子の半生」(初出、昭和15年12月、『婦人公論』、引用は、ちくま文庫版『智恵子紙絵』によった。)に次のような記述がある。父死後の始末も一段落ついた頃彼女を海岸からアトリエに引きとったが、病勢はまるで汽缶車のように驀進して来た。諸岡存博士の診察もうけたが、次第に狂暴の行為を始めるようになり、自宅療養が危険なので、昭和十年二月知人…続きを読む
物語作成機械 2011年07月13日 細馬宏通氏のブログに Alter Ego という作文プログラムが紹介されている。 空欄に言葉を入れると作品ができあがる。1997年頃のものらしい。試しに一つ作ってみた。 おれは中学高校と海で過ごした天空には小学校までしかないからだそのまま海で職を見つける者が多いがおれはここに帰ってきた高校生のときに天空の中央に発電所ができた発電所のまわりには鉄条網が張りめぐらされ立ち入りが禁止された…続きを読む
智恵子の『マグダ』評 2011年06月17日 長沼智恵子が、「マグダに就て」という、ズーデルマン原作の『マグダ』の批評を、1912(明治45)年6月の「青鞜」に寄せている。 *『故郷』明治45年6月、金尾文淵堂、装幀中沢弘光 『マグダ』はヒロインの名をとった呼び方で、『故郷』とも呼ばれた。島村抱月が翻訳し、文芸協会の第3回公演として、5月3日から10日間、…続きを読む
伝記小説 2010年12月23日 ものを考えていて、一駅乗り過ごしてしまったので、駅前のS古書店を久しぶりに訪ねることにした。 中公文庫のアーヴィング・ストーン著、新庄哲夫訳『炎の人ゴッホ』(1990年)など数冊を購入した。この本の原題は、Lust for Life The Novel of VIncent van Gogh で初刊は、1934年である。原題は、「生への渇望」ということで、小説 Novel と銘打ってある。 三…続きを読む