マックス・ノルダウから今を見る

 マックス・ノルダウという思想家がいて、『現代の堕落』という題で翻訳された、その著『退化論』が1910年代に日本近代文学に影響を与えた。 拙編著『近代日本の象徴主義』(おうふう)の「文献解題」では次のように解説した。大日本文明協会編『現代の堕落』 一九一四(大正三年)三月 大日本文明協会 本書は、マックス・ノルダウMax Nordau(一八四九-一九二三)のEntartung(英訳名Degene…

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ただ眺める本

 購入しました。江口寿史画集『STEP』(河出書房新社)。  初回限定ダブルカバーです。  1992年に出した本の口絵に大空ひばり君を使わせていただきました。ええっ、それからほぼ四半世紀ですか。  絵の鮮度はおちていませんね。  わたしのベストは、ちょっとラフなタッチの《ぐるぐる巻き》でしょうか。  武田刃物工場の広告の金槌乙女もなかなかいけています。  絵の中の女性たちに似た人は現…

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小鳥のよう

 漱石の『永日小品』に「心」という一編がある。前半と後半がきれいにV字形に折り曲げられたような構成である。 前半では、小鳥が語り手の掌に載ってくる。後半では、語り手の望みどおりに作られた顔の女の後を、前半の鳥のような気持ちとなってついていく。 随筆『文鳥』では、鈴木三重吉に贈られた文鳥の首をかしげる仕草から、ある女性のことを思い出す。帯揚げをその女性の首筋にたらすいたずらは、ちょっとエロティック…

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週刊誌連載小説と源氏物語

中公のシリーズ「日本の歴史」の月報の対談を総集した『対談日本の歴史』(1971年3月)。390円という定価が付いているので、販売されたのである。日本史の学説は大きく変化しているので、あまり意味はないかもしれないが、学者と、作家、思想家の組み合わせなので、古びても読める部分はあるかもしれない。最近は、講談社文芸文庫で全集の月報をまとめたものが出ている。古書でも、月報が2,3千円で出ることがある。 …

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バースデイ・ガールのお願いは

 さて、村上春樹の短編小説『バースデイ・ガール』でバイトの女子が、レストランのオーナーにしたお願いはどんなものでしょう。 ①「平凡でもいいので、自分らしい人生を歩んでいきたい。」 ☆☆教室では無難な答えです。文脈もふまえているし。でもおもしろみはない。  ②「きょうのこのことを黙っているつもりですが、話してもいいと思える男性に出会えるようにしてほしい。」 ☆☆☆ちょっとよくなった。オーナーに依…

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あれとこれ こんなところに

 右、村上春樹作、カット・メンシック画『バースデイ・ガール』(新潮社)。 左、ワイルド『サロメ』挿絵。ビアズリー画。  ウロコ、あるいは魚の卵みたいな形は、ホイッスラーがレイランドの依頼で内装をうけおったピーコックルーム(1876年)の孔雀図の羽根の表現が起源だとされている。  メンシック描く、アルバイトの女の子は、一時期の松田聖子を想起させる。 1日だけ、オーナーの604号室に食事を運んだ…

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プロパガンダの文学

売れ残った毎日新聞を買い求めると、新刊広告があり、五味渕典嗣『プロパガンダの文学 日中戦争下の表現者たち』(共和国、5月末刊)の予告があがっている。 「従軍作家たちの《書法》を問う」とある。 AMAZONから目次を紹介しておこう。はじめに1. 本書の視角2. 対象・方法・議論の射程3. 本書の構成第1章 プロパガンダとしての文学:戦記テクストの情報戦争1. 交差するテクスト2.「生きてゐる兵隊」…

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あれとこれ 『お菊さん』の東西

過去記事《ピエール・ロティ『お菊さん』の挿絵》。 このたび、野上豊一郎が、挿絵を模写した英語版を入手した。 上が、ルイジ・ロッシのオリジナル。 下が、野上の模写。 ロッシのは、石版である。 野上のは金属版(亜鉛凸版)である。  野上訳の大正4年版を探しているが、みつからない。 国会デジコレにはあがっている。  挿絵入りの豊かさが伝わったこと。版を変えることによる線描の変化。  考えること…

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古本日記 百閒先生にあうの巻

☆昨日は、ふらふら、ほげほげの状態でも出勤。疲れがたまっている。 仕事するうちに、少し楽になってくるが、処理速度はおそい。 一つ予定の仕事を完了する前に、17時過ぎる。 持ってかえるものを選定して、口笛文庫に行こうと思う。 いつもの、疲労したときの頓服的役割を期待してのことである。  六甲道から坂をあがる。あいていた。 本は、だいぶんかわっている。  文庫櫂さんへ行ったのは、先月20日だから…

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ふつうの日記

☆出先のローソンでコーヒーを購入したら、いれて出してくれた。手渡しではない。キャップは自分でする。 ☆ネット上の「個人」は、すべて〈動員された個人〉だと痛感する。 ☆ブログ記事の更新通知に特化したツイッターを設けている人がいて、これならまねしてもいいかと思った。

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