ピンのあと

 満谷国四郎《二階》。「文部省第四回美術展覧会出品」とある。 1910年の文展の出品作である。 団扇をもった女性像は見るたびに集めているが、今回は穴のあとが気になった。 いたずらであけられたのか、あるいは、どこかに貼られていたのか。 押しピンの発明はいつ頃なのだろう。  記憶が曖昧だが、荒畑寒村の小説に、壁に革命家の写真を貼っているという場面があったように思う。

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お城の見える古本市

 昨日は、ツイン21へ。 2冊のみ。デッドストックのようにきれいな、冬樹社版、谷沢永一『牙ある蟻』。 それと、改装本だが、明治43年の大成堂の『印象』というスケッチ集。最初は改装と気づかなかった。ただ、小型ヨコ本のコマ絵集がけっこう出ているので、参考になる。

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ピエール・ロティ『お菊さん』の挿絵

 黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(2010年、工作舎)に、新潮社、大正4年版の野上臼川訳、ピエール・ロティ著『お菊さん』が取り上げられている。臼川の本名は豊一郎。目次の横に「訳者装幀」と書かれており、そればかりか、挿絵も野上が模写したものであるとされている。 わたしの手元にあるのは、この再刊本で、新潮社、大正12年7月刊となっている。「尚ほ此の翻訳について」という「訳者附記」があり、その中に、「此…

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古本大学

 仕事先で休憩時間ができたので、ふと思いついて黒岩比佐子の『古書の森 逍遙』(2010年、工作舎)を取り出して読み始めた。確認したいところはすぐ見つかったのだが、そのあとも読んでいると、見出した古書が仕事に偶然つながったり、探していた本を業者風の人に先取りされて、おいかけてしまったりするところなど、古本あるあるでおもしろい。  仕事の整理をつけたあとで、先週空振りだった口笛文庫に寄ることにする…

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もの食う谷崎潤一郎

 奈良、柘榴ノ国で、400円。角川書店版、昭和文学全集の特典アルバムとか。たくさんあったが、谷崎だけにした。  貫禄がある。福田家での食事風景。  フジケイで500円。谷崎潤一郎『文章讀本』昭和17年4月、百四十版、初版は昭和9年。

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尾崎一雄『あの日この日』

 旧講談社文庫版、尾崎一雄『あの日この日(一)』(昭和53年7月)の「三十二」には、震災のことが書かれ、自らの見聞とともに、瀧井孝作「異臭」や志賀直哉「震災見舞」が紹介されている。ぜひ一読をすすめたい文献である。 吉村昭の『関東大震災』(文春文庫)もすぐれているが、作家たちの体験記をまとめた一冊があればいいと思う。

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奈良博、源信展に

 朝早く起きたが不調で、少し休んでから、奈良国立博物館の源信展に出かける。 暑さがやわらいでいるので助かる。近鉄奈良から徒歩で向かう。 六道絵の一堂展示は終わっているが、火車の表現を見ておきたいのだ。火車は三つ見ることができたが、南北朝期のもの、当麻寺奥院の《十界図屏風》の火車が気になった。図録で確認しようと思ったのがまちがい。分厚い図録は絵が小さく、iPadのアプリで指でメモしておけばよかった…

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羊夢舎へ

 フォロー、フォロワー外からツイッターでものを言うときの挨拶が「FF外から失礼します」というらしいが、当方は考えあってアカウントは取得していないので、「ツイッター外から失礼します」となるのだろうか。ともあれ、古本好きの人たちのツイートを参考に、正雀の羊夢舎にいってきた。 阪急正雀で下り、東側を梅田方向に歩き、TACOハウスという小さなビルを左に折れてまっすぐ行くと二筋目の角が羊夢舎だ。コテツさん…

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『明治全小説戯曲大観』

 思い屈して(だいたい毎日であるが)、古本散歩に出る。 阪急、阪神今津からすぐの蝸牛(かたつむり)へ。 高木文編著『明治全小説戯曲大観』(大正14年11月、聚芳閣)を1080円で。 今はこうした作品年表はいくらもあるが、写真がおもしろそうで購入。 さて、明治29年の「沙地浪宅ニテ」という写真。硯友社の面々ということはわかるが、確定できるかやってみる。 神奈川近代文学館の神奈川文学年表に記事が出て…

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古本散歩

 彩華堂に電話すると開いているというので、出かける。 立花で下りて、商店街を突き抜けて、国道を渡り、高架下を抜けて、カラオケ屋さんのとなり。道を挟んで向かいは星乃珈琲。  整理中と言うことで、奥までは見られない。 中村光夫『谷崎潤一郎論』元版、傍線ありで500円。マイケル・サリヴァン『中国山水画の誕生』3100円。文庫3冊。サリヴァンのは、こういうジャンル幾冊か読むのだけれど、つかみにくいので…

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新刊ウォッチ

 書店の文庫新刊棚を見ていると、日本推理作家協会編『推理作家謎友録 日本推理作家協会70周年記念エッセイ』(角川文庫)を見つけた。

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日々浪々

◇近藤ようこ『夜長姫と耳男』が10月の岩波現代文庫に入るようです。 ◇例年、8月20日過ぎに、体調が悪くなるのだが、今年もそうだ。ただ、いつもは、ツクツクホウシが泣き出して、夕方が秋めいて、どっと疲れが出るという感じだが、今年は、上旬がすずしく、中旬以降に蒸し暑さがぶり返す展開で、よけいこたえる。15日の下鴨は、曇天だったが、汗がしたたり落ちた。やるぞーという感じが失せてしまう。本も読めなくな…

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雑書雑読

 「雑書雑読」というのは、竹内好の「浦和日記(1948年)」(『竹内好全集』第16巻、1981年、筑摩書房)に出てくる言葉。 出版社から借金を重ねている。1948年1月4日に新宿を散歩し、「昔の上海の裏街のような感じ」と記している。7月11日、丸山真男の「日本ファシズム」を激賞している。 10月28日、高島屋で古書展をみるとある。百貨店の古書市はいつごろから始まったのだろうか。 竹内は、書きもの…

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わすれ団扇

 竹久夢二に《わすれうちわ》という作品があって、お葉をモデルにしている。垣の前に立つ女性が団扇をあごのあたりにかざしている。 今でも木版が販売されている(たとえばここ)。「わすれ団扇」という題は、いわゆる秋扇、夏が終わったあとの団扇のことだ。用済みになったという意味が含まれている。 今橋理子『兎とかたちの日本文化』(2013年9月、東京大学出版会)は、上村松園《待月》という絵について、おもしろい…

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夏目伸六『父の法要』

 先日購入した夏目伸六『父の法要』(1962年、新潮社)からメモしておこう。 「いんちき夫婦」。初出は朝日新聞らしいが年月日不詳。新橋で「夏目」という「呑み屋」をやっていた。松山中学出身という客がやってきてからまれる。中学赴任が同窓会誌では明治38年と誤植されていて、ただしく、28年と言ったところがかえっていんちきだと思われるという話。  「銀流し」も同趣向。〇〇新聞の論説新聞だという男が来て…

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