夏目漱石『こころ』見返しについて

2017/11/23 23:23
 別の目的で文献をしらべていたところ、漱石『こころ』の見返しについて言及している文献を見つけたので紹介しておきたい。 文献は、『宮城学院女子大学大学院人文学会誌』第15号(2014年3月31日発行)掲載の、「修士論文題目及び内容の要旨」畑山杏那「夏目漱石における服飾感情と服飾描写—思想との関係を中心に—」。 「『心』では見返し、『硝子戸の中』では表紙と見返しに更紗が採用されている」という指摘がある。『心』見返しの場合は、「古渡更紗風の創作更紗模様」と考えられている。『硝子戸の..

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わすれ団扇

2017/08/21 18:16
 竹久夢二に《わすれうちわ》という作品があって、お葉をモデルにしている。垣の前に立つ女性が団扇をあごのあたりにかざしている。 今でも木版が販売されている(たとえばここ)。「わすれ団扇」という題は、いわゆる秋扇、夏が終わったあとの団扇のことだ。用済みになったという意味が含まれている。 今橋理子『兎とかたちの日本文化』(2013年9月、東京大学出版会)は、上村松園《待月》という絵について、おもしろい鑑賞を示している。 《待月》は1926年の作品で、柱ごしに団扇を持って欄干に寄りか..

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夏目伸六『父の法要』

2017/08/20 16:17
 先日購入した夏目伸六『父の法要』(1962年、新潮社)からメモしておこう。 「いんちき夫婦」。初出は朝日新聞らしいが年月日不詳。新橋で「夏目」という「呑み屋」をやっていた。松山中学出身という客がやってきてからまれる。中学赴任が同窓会誌では明治38年と誤植されていて、ただしく、28年と言ったところがかえっていんちきだと思われるという話。  「銀流し」も同趣向。〇〇新聞の論説新聞だという男が来て、子供時分に伸六の姉筆子と遊んだことがあるというウソを言う。  「漱石とスポーツ..

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天理ギャラリー漱石展図録

2017/05/28 17:20
東京の天理ギャラリーの漱石展の図録を取り寄せてみた。見たことがないものばかりで、ぜひ行きたいと思った。ただ、仕事の予定がたてこんでいて自由にならない。『三四郎』の原稿も目を引くが、中村不折の『不折俳画』(明治43年3月、6月、上下巻、光華堂)の原画が出ているのに関心が向いた。木版と原画がならべて示してある。『不折俳画』では木版となり、味わい深い仕上がりとなっているが、原画は筆触が流麗で色に濃淡がある。ただ木版の味もよく出ている。不折の自筆画稿と、漱石の自筆句稿「御堂まで一里あ..

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『學鐙』春号は、「特集夏目漱石」

2017/03/20 20:51
『學鐙』春号は、「特集夏目漱石」。 『學鐙』も月刊から季刊に移行するようだ。この春号が、漱石特集であることを偶然知って、版元に注文した。多くの人が、見開き2頁でエッセイを書いている。2篇気にかかるものがあったので、紹介しつつ、思うところ述べてみたい。研究ノートのひとつだと考えていただければありがたい。        池端俊策「ドラマ「夏目漱石の妻」で書かなかった人物達」 まず、池端俊策氏の「ドラマ「夏目漱石の妻」で書かなかった人物達」。この人は、ドラマ「夏目漱石の妻」の脚本家..

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松尾少年が漱石に尋ねたこと

2017/02/12 03:09
松尾少年が漱石に尋ねたこと                  木股知史 1 松尾少年への手紙  松尾寛一という十一歳の少年に宛てた大正3 年4 月24日付の夏目漱石の書簡が残っている。読者としての少年が、新聞小説『心』について質問してきたことへの返事である。まず全文を引用しておこう。*1  あの「心」という小説のなかにある先生という人はもう死んでしまひました、名前はありますがあなたが覚えても役に立たない人です、あなたは小学の六年でよくあんなものをよみますね、あれは小供..

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