天理ギャラリー漱石展図録

2017/05/28 17:20
東京の天理ギャラリーの漱石展の図録を取り寄せてみた。見たことがないものばかりで、ぜひ行きたいと思った。ただ、仕事の予定がたてこんでいて自由にならない。『三四郎』の原稿も目を引くが、中村不折の『不折俳画』(明治43年3月、6月、上下巻、光華堂)の原画が出ているのに関心が向いた。木版と原画がならべて示してある。『不折俳画』では木版となり、味わい深い仕上がりとなっているが、原画は筆触が流麗で色に濃淡がある。ただ木版の味もよく出ている。不折の自筆画稿と、漱石の自筆句稿「御堂まで一里あ..

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『學鐙』春号は、「特集夏目漱石」

2017/03/20 20:51
『學鐙』春号は、「特集夏目漱石」。 『學鐙』も月刊から季刊に移行するようだ。この春号が、漱石特集であることを偶然知って、版元に注文した。多くの人が、見開き2頁でエッセイを書いている。2篇気にかかるものがあったので、紹介しつつ、思うところ述べてみたい。研究ノートのひとつだと考えていただければありがたい。        池端俊策「ドラマ「夏目漱石の妻」で書かなかった人物達」 まず、池端俊策氏の「ドラマ「夏目漱石の妻」で書かなかった人物達」。この人は、ドラマ「夏目漱石の妻」の脚本家..

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松尾少年が漱石に尋ねたこと

2017/02/12 03:09
松尾少年が漱石に尋ねたこと                  木股知史 1 松尾少年への手紙  松尾寛一という十一歳の少年に宛てた大正3 年4 月24日付の夏目漱石の書簡が残っている。読者としての少年が、新聞小説『心』について質問してきたことへの返事である。まず全文を引用しておこう。*1  あの「心」という小説のなかにある先生という人はもう死んでしまひました、名前はありますがあなたが覚えても役に立たない人です、あなたは小学の六年でよくあんなものをよみますね、あれは小供..

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近藤ようこ漫画、夏目漱石原作『夢十夜』

2017/02/03 18:04
近藤ようこの『夢十夜』(岩波書店)読了。『図書』2月号に、夏目房之介との対談が載っている。「近藤ようこ・画」ではなく、「近藤ようこ・漫画」となっている。あとがき、対談で、はじめてふれたのは大学の口承文芸の授業で、第3夜がとりあげられたのだという。この第3夜は子供背を負って夜道を歩いていると、100年前のこんな晩におまえはおれを殺したと子どもが言うのである。たしか、野村純一に論文があって、比較的歴史の浅い昔話「こんな晩」との関連が指摘されている。『日本昔話事典』によると、「こん..

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ひとり読書アンケート①

2017/01/02 00:00
昨年に出た本に限らないが、ひとり読書アンケートを書こう。当ブログでふれていないものについて取り上げよう。○今橋理子『兎とかたちの日本文化』(2013年9月、東京大学出版会)。こうした微小なイメージから、文化史、表現史の全体につなげていくようなスタイルは好きだが、上村松園《待月》についての分析は、読んでいてあっと思ったのであった。 《待月》は1926年の作品で、柱ごしに団扇を持って欄干に寄りかかる女性を背後から描いている。帯の文様が「波兎」と言われるものでそこから、踏まえられて..

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漱石のステッキ

2016/12/11 22:46
中澤宏紀『漱石のステッキ』(平成8年9月、第一書房)。 神戸の短歌雑誌『六甲』に1984年5月から1992年12月まで連載したものに手を入れたと、「あとがき」にある。 意外にも、『彼岸過迄』は出てこない。『虞美人草』が詳しく言及されている。著者の立場は古典的なフロイト援用の理解で、そこは支持できない。 ただ、漱石のステッキ体験が整理されており、ステッキ普及の背景に分け入っているところは評価できる。岩波文庫版の『戊辰物語』の山中笑の回想を引いている。山中は刀を..

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