「凸版」と「着色木版」

2017/08/14 11:31
 斎藤昌三『書痴の散歩』(昭和7年11月、書物展望社)を見ていると、「装幀界の追想」(初出、昭和4年11月、「商業美術月報」)に、「装釘も明治大正昭和と通じて、草双紙型からボール表紙、新大和綴から布装、革装と大体の変化を見、表紙の印刷も木版から石版、金版と進化し、今日に至つてゐる」云々という一節があるが、金属版、すなわち亜鉛凸版は「金版」とされている。読みは「かねはん」でいいのだろうか。 先日購入した水島爾保布『東海道五十三次』(大正9年3月、金尾文淵堂)は、金属版と色刷り木..

続きを読む

鏡花、竹風、共訳のハウプトマン『沈鐘』

2017/07/03 23:18
 先日、文庫櫂ですすめてもらった本にヒントがあり、泉鏡花と登張竹風の共訳のハウプトマン『沈鐘』(明治41年、春陽堂)を購入。念のため、岩波文庫版の阿部六郎訳も準備したが、鏡花、竹風版の方が読みやすい。グラシン紙を剝がすのが面倒なので、はっきりわからないが、ドイツの書籍らしい装幀である。 「図書新聞」昭和52年10月22日号の辻久一の「『沈鐘』」という記事の切り抜きが挟み込まれていた。辻は昭和5,6年頃に躍起になってこの鏡花訳をさがしたがみつからなかった。昭和8年に召集解除で帰..

続きを読む

中村不折の装幀・挿絵の文献

2017/06/22 23:51
 雑誌『一寸』70号(2017年5月)掲載の岩切信一郎「中村不折の美術活動と印刷ー装幀・挿絵についてー」は、不折の挿絵、装幀についての基本文献といってよい内容である。 これまで、なんどもふれてきた石版と木版の問題にも関連する。不折といえば、漱石『吾輩は猫である』の挿絵がよく知られているが、ある図録では、すべてが石版だとなっていて当惑したことがある。 岩切の論では、そこが明確に整理されている。服部書店・大倉書店の『吾輩ハ猫デアル』の6葉の口絵、挿絵のうち、《欄干に倚って橋下をの..

続きを読む

あれとこれ 木版と石版

2017/06/13 00:08
 はじめて手にしたオリジナルの『明星』は、明治37年1月号。日本の古本屋のサイトができてまもないころ、まだ検索に制限がなく、平凡出版の芸能誌『明星』ばかりが際限なくでてきて、まいったが、あきらめずにつづけていると、青森の古本屋さんで、この号が見つかったのである。価格は2700円だったと記憶する。 それまでは、臨川書店版の複刻版の図版をコピーして、ファイルに分類していたが、印刷の本当の状態はオリジナルを見ないと分からないと痛感していた。 届いたものは、外部の保存はよいとはいえな..

続きを読む

天理ギャラリー漱石展図録

2017/05/28 17:20
東京の天理ギャラリーの漱石展の図録を取り寄せてみた。見たことがないものばかりで、ぜひ行きたいと思った。ただ、仕事の予定がたてこんでいて自由にならない。『三四郎』の原稿も目を引くが、中村不折の『不折俳画』(明治43年3月、6月、上下巻、光華堂)の原画が出ているのに関心が向いた。木版と原画がならべて示してある。『不折俳画』では木版となり、味わい深い仕上がりとなっているが、原画は筆触が流麗で色に濃淡がある。ただ木版の味もよく出ている。不折の自筆画稿と、漱石の自筆句稿「御堂まで一里あ..

続きを読む

『ホトトギス』のコマ絵

2017/05/10 21:17
『ホトトギス』11巻11号(明治41年8月)。渡辺与平のコマ絵《汽車中所見》。「紳士滑稽新聞を見るの図」とある。  宮武外骨の『滑稽新聞』が、車中で読まれていたことが分かる。『滑稽新聞』は、明治34年1月から明治41年10月まで。最終号には「自殺号」と明記された。〔付記 2017・5・11〕勘違いがあったので、記事を修正した。車中で『滑稽新聞』を読むというのが、レアなので描いたのか、増えてきた事象だったので描いたのかがわからない。個人的には前者のような気がするが。もう一つ、..

続きを読む

もっと見る