わすれ団扇

2017/08/21 18:16
 竹久夢二に《わすれうちわ》という作品があって、お葉をモデルにしている。垣の前に立つ女性が団扇をあごのあたりにかざしている。 今でも木版が販売されている(たとえばここ)。「わすれ団扇」という題は、いわゆる秋扇、夏が終わったあとの団扇のことだ。用済みになったという意味が含まれている。 今橋理子『兎とかたちの日本文化』(2013年9月、東京大学出版会)は、上村松園《待月》という絵について、おもしろい鑑賞を示している。 《待月》は1926年の作品で、柱ごしに団扇を持って欄干に寄りか..

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夢二の代作をした東郷青児

2017/08/17 00:00
 先日の記事《渋谷修と竹久夢二》で紹介した、渋谷修が『本の手帖』夢二特集、第一集(1962年1月、昭森社)に寄せた「竹久夢二と私」という文章には、東郷青児が夢二の代作をしたことが記されている。 夢二は留守がちで、港屋を守っていた夢二の妻たまきの願いに応じて、東郷が代作をおこなったという。 田中穣『心淋しき巨人東郷青児』(1983年4月、新潮社)という本を、下鴨古本まつりで購入した。著者は読売の美術記者として活躍した人で、美術評論を多数著している。 田中は、東郷の画を見ているう..

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渋谷修と竹久夢二

2017/08/15 00:00
 古本との出会いによって、ずっと気にかけていたことの手がかりがつかめることがある。 書きものがすすまず、すでに夕刻であるが、阪神夏の古書ノ市に再度足を運ぶことにする。古本好きの人々が収穫をあげていることが刺激になったということもある。会場は初日に比べると落ち着いていて、じっくり見ることができた。 書苑よしむらのところで図録を見ていると、図録の判型、体裁ではあるが、著作らしきものが数冊並んでいるのに気がついた。 市道和豊『渋谷修 アバンギャルドから消された男』(2011年、室町..

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木版コマ絵の刷り

2017/03/06 17:49
 さて、木版コマ絵の刷りについて考えてみる。 岩切信一郎「印刷から見た夢二作品」(『夢二 1884−1934 アヴァンギャルドとしての抒情』展図録、2001年4月、町田市立国際版画美術館)の所説を紹介しよう。 岩切氏は、明治末期は、木版を原版とすることが多かったという。岩切氏は「夢二が挿絵画家としてデビューした明治末期は、まだ木版を原版として用いることの方が主流であった。後の大正年間になって活発化した、描いた描線の原図そのままを写真複写して陰版を作る(湿版法)写真亜鉛凸版より..

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