口の中から蓮の花

2017/10/31 00:40
 芥川龍之介に『沼』という小品があり、つぎのようなラストになっている。「おれ」は沼に身を投げる。 おれの丈よりも高い蘆が、その拍子に何かしゃべり立てた。水が呟く。藻が身ぶるひをする。あの蔦葛に掩はれた、枝蛙の鳴くあたりの木々さへ、一時はさも心配さうに吐息を洩らし合つたらしい。おれは石のやうに水底へ沈みながら、数限りもない青い焔が、目まぐるしくおれの身のまはりに飛びちがふやうな心もちがした。 昼か、夜か、それもおれにはわからない。 おれの死骸は沼の底の滑な泥に横はつてゐる。..

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関節はずしの作品論

2017/02/17 13:39
今、校正しているのは「芥川龍之介『地獄変』覚書ーイメージの相互関連性の視点から」という論考である。作品論というのはうっとうしくて、複数の意味の可能性なんていいながら、結局は一つのラインに読みをしぼっていき、読み方競べみたいなことになる。それって感想の言い合いではないのか、といわれても仕方がないところがある。 寺山修司ではないけれど、描かれていないことも作品であるといってしまえばどうなるのか。対象作品がエンドになるのではなく、それ以後の反響等も視野に入れればどうなるのか。など..

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